『陽の末裔』食の番外編シリーズ《懐古的洋食事情》全五巻



陽の末裔(ひのまつえい)』の、番外編的な読み切り短編集?でしょうか。

陽末外04懐古的洋食事情(1)昭和元年のライスカレー
(1990/02)
市川 ジュン

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陽末外01東京ハヤシライス異聞 (YOUコミックス)
(1992/01)
市川 ジュン

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陽末外02キャベツ巻き次第 (YOUコミックス)
(1993/11)
市川 ジュン

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陽末外03血湧き肉躍る料理店―懐古的洋食事情4 (YOUコミックス)
(1994/07)
市川 ジュン

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陽末外05大正洋食倶楽部 (YOUコミックス 懐古的洋食事情 5)
(1996/04)
市川 ジュン

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上記のYOUコミックス版は現在絶版状態ですので、本家と同様通常の方法での入手は困難ですが、やはりこちらも全3巻の文庫化になって、新しく刊行されています。
ただこちらも無愛想な表紙なので、個人的には余り好みではありません。

陽末外A1新編懐古的洋食事情 1 (YOU漫画文庫)
(2000/04/18)
市川 ジュン

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新編懐古的洋食事情 2 (YOU漫画文庫)新編懐古的洋食事情 2 (YOU漫画文庫)
(2000/05/18)
市川 ジュン

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新編懐古的洋食事情 3 (YOU漫画文庫)新編懐古的洋食事情 3 (YOU漫画文庫)
(2000/06/16)
市川 ジュン

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これらは確かに、「食事」を題材に、描かれていますがいわゆる「グルメ・マンガ」とは全く異なる、純粋無垢な!)女性マンガ、特に恋愛味濃厚な読み切り作品です。

本編であるところの「陽の末裔(ひのまつえい)」が、かなり作者自身も重たかったのか、同じ登場人物を出しながらも、こっちはまるで全然別の世界のお話です!

それが良いか悪いかは、感じ方次第ですが、いわゆる女性マンガに欠かせない恋愛要素と、軽い読み味を期待されるなら、こちらを御勧め致します
中には少々苦い話も混ざってはいますが、本編よりは遥かに気楽に読む事は出来ます。飽くまでも、読み味が軽いだけで、本編の内容とキャラクターを合わせて考えると、「痛いッ!」じゃ済まない、場合もあります。
このシリーズも、現在は3冊にまとめられた文庫版ならば、通常の手段で手に入ります。

という訳で、この作品紹介はなるべく本編に頼らない、
YOUコミックス版まずは第1巻の御紹介と、
させていただきます。



まず最初に断っておくべきは、もちろんこれらに出て来る日本での食事の起源については、作者なりに調べてはいますが、敢えて正確さや根拠は二の次に以下に、なっています。
要するに、エンターティメントと言えば聞こえは良いのですが、作者が面白い方向へと、話をワザと持っていています。ですので、実際にどうだったのかは、甚だ怪しい内容となっています。

さてそこで、記念すべき第1巻の第1話ですが……さすがに、まだ力が抜けていない様です。

昭和元年のライスカレー



1926年12月25日
大正天皇崩御
摂政裕仁親王が践祚する。昭和と改元
(この日から年末まで昭和元年・
12月25日~12月31日の7日間)。


昭和は元年が7日間、そして最後の昭和64年(1989年)が1月7日までと、こちらも7日間で終わっています。
偶然にしては、出来過ぎというと言う気もしますが、昭和元年製と昭和64年製と刻印されたコインや、その他の製造物(製造年が刻印や鋳造など容易に複製できないモノ)の一部がマニアの間では、貴重とされています。これらの製造物は、予め造られていた為に、既に旧元号で作り置きされていました。

なお大正天皇が早世された事もあって、大正とは1912年(明治45年/大正元年)07月30日~1926年(大正15年/昭和元年)12月25日の15年間の短い期間ですが、近代日本史上の激動期(関東大震災・大正12年/1923年09月01日)で有ると同時に、西洋文化を取り入れた新しい文化の黎明期でもありました。
政治的にもそれまでの条件付きの制限選挙権から、男子に限る普通選挙法が施行され(女性に選挙権は無く、この為これより婦人・女性参政権運動も活発になります。『陽の末裔』の題材にもなります)、いわゆる大正デモクラシーと呼ばれる、明るく開放的で西洋的なモノを良しとする、いわゆる「自由な文化」の時代とも、言われました。
しかし、普通選挙法と同時に施行された「治安維持法」に代表される、時代の暗黒面も広がります。
第一次大戦への参戦(シベリア出兵など)など、この後に続く大陸での長い戦争状況(日中戦争と呼ばれますが、本格的に当時の「蒋介石の中華民国=中国」という国家と戦争をするのは、1937年/昭和12年07月07日に発生した「盧溝橋事件」以後とも言えます。しかし当時の中国軍と日本軍は、「双方とも宣戦布告をしていない」ので、国家間の戦争状態と呼ぶべきか否かは一概には言えません)がはじまるのも、この時代です。地方農村と都市間の経済格差が広がり、いわゆる大正デモクラシーも農村にまでは広がりませんでした
本編『陽の末裔(ひのまつえい)』は、この貧困と飢餓による過疎化が深刻な農村から、製糸工場(『女工哀史』で有名な富岡の製糸工場のようなもの)のその女工として、村を後にするところから、始まります。

今回は、1作ずつが全く個別の読み切りとなっていますので、まず作品タイトルを並べてみます。

●〈前述・コミックのタイトルにもなっている〉
「昭和元年のライスカレー」
●「コロッケに明日はない」
●「すっぷ かつれつ あいすくりん」
●「公爵様のオムライス」
●「ヨコハマ・ベイカリー・ブルース」

の、5話という読み切りとしては、まずまずのラインナップ?だと、思います。
この番外編の特徴と同時に、本編である陽の末裔既読の方には注意が必要かも知れません


1.本編に登場する人物でも、性格がまるで違う印象受ける、可能性があります。
 つまり本編の既読未読には、ほとんど影響がありません。
 〈逆に本編とは二重人格か?の様に、明暗も逆転します〉
2.完全に本編とは離れた、一世代を前後する話も登場します。
 こうなると、完全オリジナル短編です。
3.当然かも知れませんが、本編の二大ヒロインはほとんど
 登場しません。話題として出て来るか、チョイ役程度です。
 逆に本編のチョイ役がこちらの主な登場人物です


「昭和元年のライスカレー」集英社「YOU、1987年7月号掲載」これだけが、本編の『陽の末裔』集英社刊YDC(ユーコミックス・デラックス)第4巻に唯一、番外編として収録されています
なお第4巻は、「OFFICE・YOU」1986年12月号~87年4月号までの本編を、収録しています。
と言う事は、この番外編が『懐古的洋食事情』全5巻に雑誌掲載順に収録されているとすると、1995年11月号の「YOU」掲載が最後となります。本編は「OFFICE・YOU、1989年7月号」の掲載が、最後ですから本編と重なるのは、3年足らずで残りは全て本編が終えてからと言う、番外編と言うには、いささか趣の違うシリーズのような気がします

まァ、本編ではチョイ役どころか、登場シーンが1コマ有れば上等!という人物が、堂々と短編読み切りとは言え、1話丸ごとの主人公となるのですから、番外編と言うよりは別シリーズと言っても、過言では無いでしょう。
本編が、通常のコミックス版で全7冊。同じ程度のコミックス版で、こちらの〈『懐古的洋食事情シリーズ〉が5冊!こうなると、《もう1つ別のシリーズ》と、言うべきかも知れません。

しかもほとんどが、その物語の中ではハッピー・エンド!
ここがこのシリーズの、痛し痒いところですが、本編を知っていると実は、この人は後にこんな事されて、あんな風になって、最後はこうなるんだよ!的な、展開を知っているだけに、複雑です……


洋食事情1ライスカレー

という訳で、本編連載中でもある第1話、「昭和元年のライスカレー」ではその辺の番外編要素がテンコ盛りで、このヒロインが本編のどこに登場したのか?
探すだけで、大事です。場合によっては話だけで、登場すらしていない場合もありますから。

次の、「コロッケに明日はない」まったく、意味が違うのですが……。
それは兎も角、まず本編既読者がぶっ飛ぶのが、本編ではほとんど変態ロリコン・エロ親父か!?と、言う扱いをされていた人が、父親がいない家の中で、家父長として専横を振るっていた彼が、実に末の妹に激アマなのがバレていながら、それでも強がる今で言うところのツンデレ親父!?というのが、微笑ましいのを通り越して、抱腹絶倒。
その自分に甘いのを良い事に、自由奔放?大らかで素直で、結果として危なっかしく、育ってしまったので、結果としてその責任者の父親代わりの兄も誰も、彼女に逆らえなくなってしまった……。その為に果てしなく起こる、婚約者が気に入るためのコロッケ作り!一体この時の本当の被害者は誰なのか?最後まで分からない……!?


洋食事情1コロッケ

まァ、出典というか原点は、有名な大正時代の流行歌「コロッケの唄(カフェーの夜)」で有る事は間違い有りませんが、同時にこの作品でこのシリーズのその後の方向性が決まったと言って、差し支えないと思います。

続いての、「すっぷ かつれつ あいすくりん」にはようやくと言うべきか、本編に名前付きで登場した人物が、主人公となります。
もっとも、役柄は新聞記者ヒロインの同僚、それも余りしたくしくならないままの……と言う事で、気が付けば寿退職をしていたのですが、今回のお話はまさにその《寿退職顛末記!?》と、言えます。と、ここまで3作とも全て結婚を題材にした物語ですが、重要なのは「モダン・ガール」こと「モガ」だ!と気勢を挙げても、この大正末期から昭和初めまで「見合い、即(結納)婚約、結婚」の時代だったと言う事です。
見合いは出会いの場ではなく、結婚への除幕式みたいなモノ……だったようです。例えば、このコミックスの第1話「昭和元年のライスカレー」のヒロインは、まさに見合いから御相手と会う3回目が、既に結婚式でした。しかもそれまで、実は顔をまともに見ていなかったとか……。


洋食事情1すっぷ

しかし本編で婦人記者をやっていた、当時最先端の職業婦人!
どんな良縁であろうが、相手の男が好みのタイプであろうが、「そりゃあたしだって、教わりもしますし譲りもします。でも、程度問題だわ!あったしはねえ、杉山百合子でこれまで生きてきたのよ!ここでいきなり、奧の奧のまで『南条さんに作り変えられちゃたまんないわっ!違う人間が入るんだもん、少しは違う世界の風だって、吹くわよっ!!」と、啖呵をきると飛び出します。
そこで計ったように、当事者の婿殿?と鉢合わせ、実は全て周到な彼の母親の計画だったようです。

実はこの男性のお母様、「長い間身に付いてしまった習性は、そう簡単に脱ぎ捨てられるものでは、ありませんからね」と、だから長男を柔らかく自由に育てて、その時を待っていたのだと言います。
自分と息子と共に、家の中から『家風』という風を新しく吹かせてくれる、新しい息子の嫁となる女性を。今回の主人公は、そのお母様が選び抜いた女性ですから、当然「古い家風」に馴染む事も、簡単に背負い込む事もまっぴら御免!と言うヒロインでなければ、ならなかったのです。
そして最後に、花婿の一言「南条家では、古い風を持ち込むのも、新しい風を吹き込むのも、婦人達なのです
かくして、南条家の姑は嫁を手本に?一気に断髪洋装へ!そして、そんな嫁と姑は新しいモガ母娘として、銀座を闊歩するのでした。

そして、いよいよ「公爵様のオムライス」の登場です。
なぜ、《イヨイヨ》かと言えば、そもそも『陽の末裔』の番外編であるところの、この『懐古的洋食事情全5巻』を1巻ずつ発売の都度買い求め、読むハメになったのは、この「公爵様のオムライス」を読んだ為だったのです!
ちなみに確認しておきますと、いわゆる貴族階級は良く「公・侯・伯・子・男」という序列で、階級を爵位として説明されます。日本でも明治維新から敗戦まで、この貴族階級制が「華族」制度として、導入していました。基本世襲で、西欧では近代まで戦争などで武勲を上げたモノや、国家の為に大きな事を成し遂げた場合、この階級が変わる事もありました。しかし第一次大戦を契機に、ほぼこの慣習はなくなったようです。最下位の男爵位だけは、「1代限り」という条件付きだったりしましたが、新たに与えられたりしたようで、日本でも即製男爵は多かったようです。
尚さらにオマケですが、日本で「男爵」と訳してしまったので混乱しますが、欧米では女性の爵位も認められていた場合があり、架空の人物ですが「ベルサイユのバラ」のオスカルは、《女伯爵》でした。この為未婚の女性でも、日本語に訳す場合には、「~男爵夫人」という表現が使われましたが、この場合は男爵の妻や寡婦ではなく、自らが爵位を持つ女男爵の場合もあったので、日本の華族制度とは一致しませんでした。
日本では、華族も男性相続が原則で、爵位もそれに習いましたので寡婦や、両親他界などの場合でも基本的に、女性の爵位は認められていません。結婚すれば、相手の男に全権が移ったようです。


洋食事情1公爵

そして、この中でも一番高いの「公爵」様です。
基本的には、王族で当時の日本ではいわゆる宮家に次ぐというか、連なる家柄の者にしか与えられない、称号でした。そしてこの物語でも、それが大きく影響して、当の病弱ながら開明的で、知的で気さくな公爵様は、その宮家から花嫁を招こうとしていました。
それまでは早くに両親を亡くした、若い公爵様とその弟君を、乳母であった母親と共に教育?し。母親亡き後は、事実上の公爵家の支配者として?として、使用人はもちろん公爵家の家政全般を、公爵家としての品位や尊厳は維持しながらも効率的に、且つ若い公爵の気性に合わせて開放的で、気さくに取り仕切ってきた〈華さん〉この使用人頭?と、若き公爵のラブ・ストーリーと言ってしまえば、実はそれまでのお話です。
もちろん、いくら気さくな若い公爵と子供の頃から、家族同然に育った(通常この当時では有り得ません!)とは言え、自分の感情を「男性に対する恋愛」と自覚するなど、立場上からも有り得無い事が理解できる、有能で聡明な使用人のお嬢さん。

そして、この物語の本編『陽の末裔』でも活躍?するけれども、結局は二大ヒロインの引き立て役?に終始する、放蕩の子爵閣下。
ヒロインの登場が無い分だけ、まるでここぞとばかりあちこちに、御自慢のお抱え?我が儘絵師を連れて、この『懐古的洋食事情』には、偉そうに登場します。今回も……。
「君は結婚し、華さんも置いておくなんて事は、してはいけない」
と二人の事情を、お互い口には出さない心の内を、見透かして挙げ句「君達の障害は、お互い同士でしょう。華さんには、良縁を用意しよう。それよりも、ぼくが欲しいんだ」って、結局友情に付け込みながら、自分の女好きは隠そうとしないところが、この方らしいというか何というか……。

一方、盛り上がる宮家王女様との御婚礼に向けて、主人である公爵様のお母様以来の、公爵家女主人お部屋を整えながら、お華さんもかつて無い思いに囚われてしまいます。
「変だわ……真っ赤な壁紙でも、張り付けたいと思っている」
そして、華さんお手製のオムライス。料理長が作るのは、本格的な「オムレット」なので中まで卵で、ライスは無し。でも、公爵閣下のお気に入りは《華さんの作るオムライス》それを食べながら、華さんと口喧嘩などするのと、宮家出身の典雅で高貴な王女様と、格式高い冷めた高級料理を三度三度、黙って口にするのと、どちらが目の前の公爵様にとって幸せか?
「オムライスに……決まっています!」

かくして公爵いえ元公爵閣下は、爵位も何も全てを一歳違いの弟に譲って、華さんと白昼堂々家人皆の見送りの中駈け落ちをしたのでした!
実際健康に不安のある長男よりも、弟の方が社交性から典雅な夫人の扱いまで、実にうまくやったようです。

ただ、なのです。
このお話が好きで、是非この駈け落ちした元公爵とお華さんの、その後が知りたくて必死になって、本編『陽の末裔』を隅々まで、それこそ穴の空くほど探したのですが出て来ないのです!本編の方では、最初から最後まで弟が公爵となり、無事に宮家の王女様をお迎えした、一流の中でも超一流のカップル?として、夫妻ともお話に出て来るのですが……駈け落ちした、兄と家政婦の話などまったく欠片も出て来ません!
実際、これがなければ本編は読まなかったかも知れません。だって、それほど重いんですモノ……。
まァ、あの華さんがいる限りこの後の、如何に生活無能力者の元公爵様と一緒でも、二人の間に出来た子供達と一緒に、ワリと幸せな家庭を築いたであろう事は、間違いないと思います。また弟君も、自分に家督を譲って、華さんと駈け落ちした兄を敬愛こそすれ、恨むとも思えません。
案外、戦中戦後の窮乏の時代、更には財閥と華族制度崩壊の時代を迎え、世俗を超越した奥様を抱えた公爵家は、案外兄上と華さん夫婦を呼び戻して、名家没落の時代を乗り越えるのかも知れません。
という訳で、個人的にはこの作品がこのシリーズ全ての始まりだったのです!

そして、この巻収録の最後が『ヨコハマ・ベイカリーブルース』ほぼ完全に、本編とは縁もゆかりもありません。


洋食事情1横浜

本編のどこに出ているのか、分からないような可愛そうな田舎の小僧が、東京に出て行った(女工として買われて行った二人の、お嬢様の方)女の子を追って、東京に出た(らしい……)。東京で苦労して、何とか働けるようになって、訛も直して顔を上げてみると、彼女は既に野心満々(本編でも幼馴染みのもう1人のヒロインと、後は数人しか知らない彼女の真意)で金持ちの養女になっていました。
もはや自分を見ても気が付かない!と思ったのか、実際に会いに行ったのかは分かりませんが、ちょうど関東大震災が起こって(これを機会に、二大ヒロインは最長の空白期間を経て再開します。以降は、定期的に会おうと思えば、会える状態になって行きます。この間に本編の方で御紹介した、彼女の名セリフ「君に友達はいないのか?」の問いに、「この世に唯1人だけ~、貧富や時間や遠さにも、どんな事にも関わりない友達が一人いますわ」と答えるシーンがあります)職を失い、余り取り上げられる事が多くはありませんが、同じように大きな被害を受けた横浜の方へ、《歩いて》て出て来ました。

しかしお金が無い為に(だから歩いた!震災既に2年後との事です)、飲まず食わずでついに、空腹に勝てずに倒れたところを、この物語のヒロインに拾われた(実際に「拾った」という表現がされています!)。
そして彼女が差し入れた、横浜でも有数のフランスパンを、「命のパンだ!」と味もコミで感激し、そのパン屋工房でもあるヒロインの店へ、住み込みで押し掛け雇われします。フランス人の父を持つ、母の影響かこの工房は徒弟性でも、職人気質でもなく、よく言えば実力主義の個人主義。親方でもある店長の父親が、良いと思えば新人でも簡単にパンをこねさせて貰える……その為、お嬢様の覚え目出度い?新人は、先輩にこき使われますが、お嬢様が「東京でどんな辛い仕事をして来たのだろう?」と思わせるほど、明るく楽しそうに、どんな仕事もこなしています。
そんな彼を、ヒロインは自分の従僕?のように、自分の仕事に連れ回します。そんなお届け先の一つ、横浜に寄港した貨物船のコックにパンを届けます。すっかり、そのコックがそのパンを気に入って、横浜に寄港する度に、注文してくれるのだそうです。

そこで、パン屋見習いの彼は、トランペットの音とジャズの曲を、初めて聞きます。
まだ日本にジャズが広がる、だいぶ以前のお話です。この後この物語は、パン屋見習いの青年が、ジャズとトランペット。そして本場のフランスパンへの憧れ、全てが大きな海の彼方。
その夢と、目の前にある横浜のパン屋とそこの看板娘との、ホノボノとした恋愛と憧れ未満の物語り。取り敢えず、大きな海の向こうを知った若者が、どうするのか?

もはや、本編の『陽の末裔』とは、まるで関係無い物語がそこに展開します。
そしてこれが、この『懐古的洋食事情』シリーズが、本編『陽の末裔』の番外編シリーズとしてではなく、独立したシリーズとして刊行された(同時に本編を知らない方が!?楽しめる!!)最大の理由だと思います。
それら全ての要素が詰まった、第1巻としてこの『昭和元年のライスカレー』は、実に良くできていると思います。


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Author:HINAKA
『あんのんブログPart2・HINAKAの戯れ言』です。
本来は、『あんのんブログ・HINAKAの雑記』としてSo-netブログであったものが、So-netブログから追い出されて、ここで新たに構築するモノです。

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