『かごめ(大正妖怪綺譚)』第1巻刊行!なぜ今、魔木子氏は『うらめしや』の外伝を出したのか?



既にずいぶんと長く続いている、魔木子著マンガ『うらめしや』の外伝が、発売されました。



うらめしや外伝 かごめ ー大正妖怪綺譚ー(1) (ジュールコミックス)うらめしや外伝 かごめ ー大正妖怪綺譚ー(1) (ジュールコミックス)
(2014/01/17)
魔木子

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なぜ、本編の方が未だに続いているのに、外伝が作られ、1冊のコミックとしてしかもちゃんと「1」と言う数字付きで、発刊されたのかは分かりません。
作者自身が、コミックの中で「その疑問にはその内に答えられると思います」と、わざわざ断っているので、信じる事にしましょう。


うらめしや 1 (ジュールコミックス)うらめしや 1 (ジュールコミックス)
(2001/04)
魔木子

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うらめしや(19) (ジュールコミックス)うらめしや(19) (ジュールコミックス)
(2013/07/17)
魔木子

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と言う訳で「ノンアダルト」の言わゆる「女性マンガ誌」通称、「レディーズコミック」作品の中では希有に長期連載を誇るのが、この魔木子氏の『うらめしや』です。
コミックスの第1巻発売が、2001年で最新刊が今のところ2013年の第19巻だと言う事も、女性マンガ誌上では希有な事なのに、それが現在も連載中だという事が驚きです。しかも、女性マンガ誌では珍しく、「読み切り連作」ではなく紆余曲折はあるモノの、物語の中でも時間が経過している「経年連載」となると、もはや異例とさえいます

しかもその上に、明らかにその作品の外伝的な作品で、時代が江戸時代から大正時代へと移ったと考えられる設定。
更には、江戸時代の登場人物の子孫が物語の主役とされる作品が、既に堂々と1冊のコミックとして刊行されている!のは、まさに例外中の例外。正直、既に第1巻と数字が入っていて、いいのか?と、不安になりました。


と言うわけでネタバレの、内容紹介です。



結論的に言えば、「思った以上の当たり作品!」だと、思います。
その最大の理由は、この作品がこれまでのいわゆる「魔木子作品」と大きく異なる点が、良い方に作用している!からだと、思います。これは、そもそも本編の『うらめしや』シリーズが長く続くに連れて、それまでの「魔木子作品」に特徴的だった、主人公を含めた《悲劇性》が、かなり薄くなった!という特徴を、ある種最大限に利用しているからだと思います。

もう一つは、何と言っても主人公の出で立ちです。
本家『うらめしや』が江戸時代を舞台としている関係で、当然ですが女性の服装は全て着物。もしくは和服の類になりますし、男性には「髷(まげ)」が必須という、表現上の制約があります。
しかしこれを大正時代に移すと、まさに世は《和洋折衷》の時代で、男性の髷もありません。時代的にこれほど自由に、現代から見ると滑稽なほど真面目に、服飾デザインはもちろん(モダンガール=モガ、モダンボーイ=モボと称された時代です)建築にも洋式と和式の、様々な点が取り入れられ、極論で言えば洋館のような日本式家屋など、まさに作者の自由です。

ある意味で背景の時代考証がデタラメ、良い意味では作者の自由に出来るところが、この時代設定の妙です。
しかも物語上、いきなりヒロイン主人公のスタイルが、メイド服!という点で、ある種呆気に取られます。しかもこの時代で有れば、今日のように職業としての使用人では無い訳で、事実上「洋式スタイルの女中奉公」も、有りとなります。
まさに、現代女性の革新が始まった時代ですが、同時にそれ以前の江戸時代的因習が、色濃く残り現在では差別用語とされ報道等では使用できない、「女中女中扱い」等の表現が、許された女性蔑視の時代だからこそ、ヒロイン主人公の活躍がより爽快に感じられます!

基本的にはタイトルに「妖怪綺譚」とあるように、敵は怨霊や妖魔。
妖術・魔術、陰陽道から密教まで何でも有りの、現代的な妖魔対戦!何しろ、ヒロインの母親自身が自分を「魔女」だと吹聴していますが、最も強力な呪詛は「霊符(れいふ)」という、それこそ陰陽道的な紙に書かれた呪詛の札です。もっとも実際には、仏教特に密教や通常の古来縁(えにし)の神社に伝わる神道でも使用される、いわゆる「お札」です。
平安時代の安倍清明が有名で、様々な作品で彼がこれらの「霊符(自分や周囲を守る護符は現代でも使われていますが、人やモノを呪ったり呪詛的に封印したりするものでもありました)」を使用する場面が描かれています。実際には「霊符」という言葉は、この作品での造語的な意味合いが強く、日常的には使われていないと思います。

しかも今回の作品では、それこそ本家『うらめしや』のヒロイン・お妖(およう)の孫に当たるとされる、小夜子(さよこ)という母親がその直系のようです。
更に、お妖と同様?妖力にも日常的な能力にも欠けるような、非才でボンクラ?な男と夫婦になった事まで、そっくりなのだそうでその力も魔力と言うよりは、日本的な呪術だと言えます。この、外伝のヒロイン、名前を「かごめ(高橋留美子氏の『犬夜叉』のヒロインとは無関係だと思います)」と言うのだそうですが、彼女まで今は英国にいるらしい父親の事を、「英国にいるパパはアホ~」と言っていますので、本当に人畜無害な凡人!なのでしょう。
なお既に明らかなとおり、この作品のメイン・タイトル『かごめ』は、このヒロインの名前と同じです。付け足せば、安倍清明で有名な五芒星「清明桔梗紋」ですが、これは陰陽道などでも例外的なモノらしく、曰く「清明の攻撃紋」という説もあります。
これに対して同じく安倍清明も用いたという伝承のある、由緒正しい六芒星「籠目紋(かごめもん)」は陰陽道だけではなく、仏教や神道その他、西洋にも護符として有名なユダヤの象徴です(ダビデの星)。イスラエルの国旗としても知られていますが、この文様はある種洋の東西を問わず、護符やお守りそして呪符としての伝統?が有るそうです。


五芒星〈五芒星〉   六芒星〈六芒星〉


なおどちらにも「清明」の名を冠したものが有るので、実際に彼がどちらを使ったのか?あるいは両方を使い分け、「桔梗紋=攻撃用・籠目紋=防御用」とでもしたのかは、謎のままです。
とにかく、一般的に「籠目紋・六芒星」は「お守り」としての効果があると、かなり昔から広く信じられていたようです。さて、本来の『うらめしや外伝かごめ大正妖怪綺譚』に、戻しましょう。
と言う訳?で、実はこの主人公ヒロインは、母や曾祖母とは異なり、呪文や呪符は用いません。武芸に秀で、人の心や先読み(予知)をする母親からの反発か、何と無我の境地にまで達しています。
ところがその為に、完全に非社交的で、日常的な行為には殊の外無頓着。と言うよりも、家事一般はもちろん、それこそ女の子らしい事や子供らしい事にも、興味がありません。あるのは、武術や戦闘的行為のみと言う、男性的を通り越したいわば乱暴者です。

ここで、この物語のもう一つの特徴である、「語り手でもある友人の登場!」です。
これはこの作者の作品傾向としては、極めて珍しい事です。そもそも悲劇的な背景を持つヒロインが、日常とは懸け離れた生活を送るに当たって、語り手役は同時に恋人や愛人などの、男女関係にある男性が務める事がほとんどです
しかし今回は、男性など近付く方が無理!的な、ヒロインに対してある意味で対等な、彼女曰く「パパよりよっぽど頭のいい~」同世代の同性の友人が、登場します。と言うか、同等の友人になるまでが、この1巻の内容全てとも言えます。
何しろ最後は、ヒロインが面と向かって「友達になってくれて、ありがとう」と言われて、顔を真っ赤にして固まってしまうところで、終わっているのですから……。

そして最終的に、この物語のここまでの展開では、この作者には珍しいほど「笑い」と「平穏」に満ちています。
忘れていた訳では無いのですが、このヒロイン〈かごめ〉ちゃんがなぜ似合うとも思えない。そして、好みとも思えない、《メイド服》を、着ているかというと英国の魔女と母親が、些細な事から大喧嘩!日英魔法戦争になった……余りにもつまらない理由と、相手の息子に母親が掛けた呪いと、その相手が自分に掛けた呪いが、どちらも「100体の妖魔を浄化しないと解けない」というものだったのです。

しかも仮装パーティ中の事で、相手の息子は侍姿で、こちらはメイド姿という事で、この呪いを解かない限り、それぞれの衣装を別のモノに着替えたら「死ぬ」事になっている!らしいのです。
その代わりに、脱ぐだけなら自由で全裸はOKと言う辺りから、この話も何か裏がありそうな気がします。そうでなければ、この母親が「さすらいのメイドかごめの次なる勤め先は~」などと言ったりするでしょうか?どうも面白がっているとしか、思えません。
ただ作者が有名な手塚治虫先生のマンガ『どろろ(もしくは「どろろと百鬼丸」)』を知って応用したのかどうかは、定かではありません。

まだ続くそうなので、取り敢えず今回は登場しなかった、娘に「バカだ~」と言われた英国在住の父親や、その英国で母親と張り合った魔女と、その為に同じ様な呪いに掛けられ、侍姿の息子など。
興味は、尽きませんが本編の方も、気になります。敢えて言うなら、この作者初めての万人向け?作品として、お勧めは出来ます。



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『あんのんブログPart2・HINAKAの戯れ言』です。
本来は、『あんのんブログ・HINAKAの雑記』としてSo-netブログであったものが、So-netブログから追い出されて、ここで新たに構築するモノです。

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