なぜか無視されている気がする中村地里氏による少女マンガ版『アルスラーン戦記』
以前から気にはなっていたのですが、TVアニメ・シリーズの放映が始まって、ますますその傾向が強まった?気がするので、やはりファンとして放っては置けないと言うか、無視できない気がします。
現在放映中の田中芳樹氏の原作で、荒川弘氏のマンガ版を元にした、TVアニメ・シリーズ『アルスラーン戦記』に、ケチを付ける気は毛頭ありません。唯個人的に、この原作マンガはどうも肌が合わなくて、特にファランギースの服装と笛は何とも落ち着きません。
更に今回のマンガ化に合わせて、色々と省略したり改変されたストーリーも、どうも個人的な納得の範疇を越えています。
アルスラーン戦記のマンガ化は、この荒川弘氏のものが始めてではありません。
既に一度、いわば「第一部完」とも言える田中原作小説では『王都奪還・下』までを、全13巻のコミックにまとめた作品があります。
角川書店の明らかに少女マンガ的な月刊誌だった、『ファンタジーDX』に連載されていた、中村地里氏によるマンガ版『アルスラーン戦記』です。明らかに好みの問題ですが、個人的には現在の荒川弘氏のマンガ版よりも、こちらの中村地里氏版のコミックの方が、馴染めます。
でまァ、それはそれとして改めて改めて講談社から、原作小説と荒川弘氏版のコミックが出る事は良いのですが、見事に言うか何故にと言うか?すっかりと、中村地里氏版のコミックの存在自体が、事実上抹消されているような感じなのです。
〈Amazonリンクですがいつ切れるか分かりませんし既に他巻は消えています〉
と言う訳で、取り敢えずは手持ちのコミックから、表紙を並べてみます。
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改まってお断りするほどのものではありませんが、これは決して《先にマンガ化した方をアニメ化すべきだ!》とか、《こちらの方がアニメ化に向いている!》などと主張するものではありません。
実際、ほぼ同時期にKADOKAWAが神村幸子氏の手掛けたキャラクター・デザインで劇場用映画として、またOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)として、製作し上映販売しています。こちらは、角川書店のお家騒動で完全にまとまる事無く、OVAも中途半端のまま終わった気がします。
もちろんこのアニメにも、今回取り上げている中村地里氏版のマンガは、関係していません。
中村地里氏の作品としては、現在まで(2015年07月)のところ、最長編である事は間違い有りません。
そしてこれは個人的見解なのですが、作品としても氏の代表作として例え原作付きであっても、誇れる作品であると思います。さすがに原作が原作ですので、物語の設定や背景などはしっかりと出来上がっていますが、問題はそれを視覚化した絵としての表現です。これも、この作品はある意味で少女マンガらしく、服装にしろ建物の装飾にしろそれぞれが、中心となる人物や展開する物語に合わせて、華やかで機能的という難しい表現を、良く描いていると思います。
これらは、あの有名な名作『ベルサイユのバラ』に端を発する、少女マンガによる歴史(架空)ファンタジー・アクションの伝統を受け継ぎながら、発展・展開して来たジャンルの明らかに1つだと思います。
何より本来少年マンガは、そのアクションの派手さや盛り上がりに、ともすれば重点が置かれ人間関係の機微や、服装はもちろんその言動と、時には背景のギャップなどのコミカルな場面が、どうしても希薄になりがちです。
しかしこの作品は、むしろ少女マンガらしく人間関係の機微や、コミカルな表現にも配慮が見られ、特に服装を中心とする装飾的な事柄に関しては、武器や馬にもそれぞれの場面と人物の関係を、分かり安く表現するように描かれていると思います。その為逆に少年マンガ的なアクション(戦闘)シーンや、解説的な内面描写などの堅苦しい部分が希薄で、ある意味で分かり難いという感じはします。
その代わり人間対人間の関係描写や、心理描写など本来少女マンガ得意とする部分は、遺憾なく発揮されむしろ分かり易く描かれているとすら、言えると思います。
よく使われる例えですが、「少年マンガでは時として、争った敵同士が結果として理解し合い、固い絆で結ばれる事が往々にしてあるが、少女マンガでは極端な話し負けた側には、敗北の屈辱と恨み辛みしか残らない」もちろん、そうではない少年マンガも少女マンガもあります。
ですが下地として、少年マンガにどうしても《理想として殴り合った後で握手できる幻想》が、あるのだと言います。スポーツ・マンガを初め、基本的に何かを競うジャンルの少女マンガでは、当然のようにライバルを蹴落とす為には、手段を選ばない!
さすがに、古典的な相手の靴に画鋲!?みたいな方法はともかく、精神的なプレッシャーやいわゆるハラスメント(嫌がらせ?)系は、いまでも王道です。
既に定評のある、完成した物語が原作にあるのですから、マンガとしては何を省略し何をより精緻に表現するか?という事になりますが、これはもうまず少年マンガと少女マンガという違いが、端的に現れていますのでその点を敢えて無視すると、やはり《妖術》の存在と、その描かれ方に大きな差が見られます。
実は個人的に、この点に関してこの物語の原作から、果たしてこれは《妖術・妖魔・術師》などが、関わり合うべきものだったのか?という根本的な、疑問が押さえられません。
少なくともこのマンガが描かれた、「王都奪還〈下〉」のアルスラーン国王即位までの物語には、敢えて必要なかったのではないか?というのが、原作を読んだ時からの印象でした。
その為か、同様の違和感をこの中村地里氏のマンガから感じ取ってしまうのは、贔屓(ヒイキ)の引き倒しかもしれません。
いずれにせよ、やはり女性が描く女性向けマンガは美しい?と言うべきか、この作品で描かれるファランギース(美女の中でも絶世の美女!?)は聖職者としてもあるまじき?大胆な露出の服装や、本来あるべきかも知れないゾット族の族長の娘・アルフリードの顔や体に付けられた文様などは、正直好みではありません。
〈参照:ファンタジーDXコミックス・中村地里著
『アルスラーン戦記』第11巻裏表紙・第9巻の中〉
やはり、逆にどうやってあれほど見事に弓が引けるのか?的な、華美ではないけれども動いた時に映える重ね着や、装飾品を身に付けた姿。
アルフリードがどうして、ナルサスに一目惚れしたのかをもう少し詳しく描いた上で、その年齢ギャップが文字通り大人と子供!と言うコミカルさ。どう考えても、ナルサスよりはエラムとの方がお似合いではないか?と思える、互いの意識の微妙な差など、明らかに意識して描かれていて、この方が馴染みやすく好感が持てます。
不思議なのですが、ファランギースはもちろんパルス王妃の、タハミーネもまた傾国の美女のハズですが、残念ながら荒川弘氏の描くキャラクターからは、そのような雰囲気はまるで感じられません。
もちろん、美女は美女なのですが‥‥‥。
とにかく、『絶版・重版未定』で、マンガ文庫化もされていないのですが、明らかにここにもう一つのマンガ版『アルスラーン戦記』があり、しかも一応の完結を見ているという事実と、少女マンガとしてではあるけれども良く出来ているという感想を、どうしても明らかにしておきたかった言う事です。
実際、ほぼ同時期にKADOKAWAが神村幸子氏の手掛けたキャラクター・デザインで劇場用映画として、またOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)として、製作し上映販売しています。こちらは、角川書店のお家騒動で完全にまとまる事無く、OVAも中途半端のまま終わった気がします。
もちろんこのアニメにも、今回取り上げている中村地里氏版のマンガは、関係していません。
中村地里氏の作品としては、現在まで(2015年07月)のところ、最長編である事は間違い有りません。
そしてこれは個人的見解なのですが、作品としても氏の代表作として例え原作付きであっても、誇れる作品であると思います。さすがに原作が原作ですので、物語の設定や背景などはしっかりと出来上がっていますが、問題はそれを視覚化した絵としての表現です。これも、この作品はある意味で少女マンガらしく、服装にしろ建物の装飾にしろそれぞれが、中心となる人物や展開する物語に合わせて、華やかで機能的という難しい表現を、良く描いていると思います。
これらは、あの有名な名作『ベルサイユのバラ』に端を発する、少女マンガによる歴史(架空)ファンタジー・アクションの伝統を受け継ぎながら、発展・展開して来たジャンルの明らかに1つだと思います。
何より本来少年マンガは、そのアクションの派手さや盛り上がりに、ともすれば重点が置かれ人間関係の機微や、服装はもちろんその言動と、時には背景のギャップなどのコミカルな場面が、どうしても希薄になりがちです。
しかしこの作品は、むしろ少女マンガらしく人間関係の機微や、コミカルな表現にも配慮が見られ、特に服装を中心とする装飾的な事柄に関しては、武器や馬にもそれぞれの場面と人物の関係を、分かり安く表現するように描かれていると思います。その為逆に少年マンガ的なアクション(戦闘)シーンや、解説的な内面描写などの堅苦しい部分が希薄で、ある意味で分かり難いという感じはします。
その代わり人間対人間の関係描写や、心理描写など本来少女マンガ得意とする部分は、遺憾なく発揮されむしろ分かり易く描かれているとすら、言えると思います。
よく使われる例えですが、「少年マンガでは時として、争った敵同士が結果として理解し合い、固い絆で結ばれる事が往々にしてあるが、少女マンガでは極端な話し負けた側には、敗北の屈辱と恨み辛みしか残らない」もちろん、そうではない少年マンガも少女マンガもあります。
ですが下地として、少年マンガにどうしても《理想として殴り合った後で握手できる幻想》が、あるのだと言います。スポーツ・マンガを初め、基本的に何かを競うジャンルの少女マンガでは、当然のようにライバルを蹴落とす為には、手段を選ばない!
さすがに、古典的な相手の靴に画鋲!?みたいな方法はともかく、精神的なプレッシャーやいわゆるハラスメント(嫌がらせ?)系は、いまでも王道です。
既に定評のある、完成した物語が原作にあるのですから、マンガとしては何を省略し何をより精緻に表現するか?という事になりますが、これはもうまず少年マンガと少女マンガという違いが、端的に現れていますのでその点を敢えて無視すると、やはり《妖術》の存在と、その描かれ方に大きな差が見られます。
実は個人的に、この点に関してこの物語の原作から、果たしてこれは《妖術・妖魔・術師》などが、関わり合うべきものだったのか?という根本的な、疑問が押さえられません。
少なくともこのマンガが描かれた、「王都奪還〈下〉」のアルスラーン国王即位までの物語には、敢えて必要なかったのではないか?というのが、原作を読んだ時からの印象でした。
その為か、同様の違和感をこの中村地里氏のマンガから感じ取ってしまうのは、贔屓(ヒイキ)の引き倒しかもしれません。
いずれにせよ、やはり女性が描く女性向けマンガは美しい?と言うべきか、この作品で描かれるファランギース(美女の中でも絶世の美女!?)は聖職者としてもあるまじき?大胆な露出の服装や、本来あるべきかも知れないゾット族の族長の娘・アルフリードの顔や体に付けられた文様などは、正直好みではありません。
〈参照:ファンタジーDXコミックス・中村地里著
『アルスラーン戦記』第11巻裏表紙・第9巻の中〉
やはり、逆にどうやってあれほど見事に弓が引けるのか?的な、華美ではないけれども動いた時に映える重ね着や、装飾品を身に付けた姿。
アルフリードがどうして、ナルサスに一目惚れしたのかをもう少し詳しく描いた上で、その年齢ギャップが文字通り大人と子供!と言うコミカルさ。どう考えても、ナルサスよりはエラムとの方がお似合いではないか?と思える、互いの意識の微妙な差など、明らかに意識して描かれていて、この方が馴染みやすく好感が持てます。
不思議なのですが、ファランギースはもちろんパルス王妃の、タハミーネもまた傾国の美女のハズですが、残念ながら荒川弘氏の描くキャラクターからは、そのような雰囲気はまるで感じられません。
もちろん、美女は美女なのですが‥‥‥。
とにかく、『絶版・重版未定』で、マンガ文庫化もされていないのですが、明らかにここにもう一つのマンガ版『アルスラーン戦記』があり、しかも一応の完結を見ているという事実と、少女マンガとしてではあるけれども良く出来ているという感想を、どうしても明らかにしておきたかった言う事です。
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