劇場版名探偵コナン『異次元の狙撃手(スナイパー)』の作品そのものではなく、この作品の中でもう一つのキャラクターとも言える活躍?をした、銃器。
特に狙撃銃に関して、その銃弾と共に考えてみたいと思います。
なお、本来銃弾の大きさ(口径)をインチ表示する場合(特にアメリカ製の場合)、1/1000インチ単位になります。
つまり45口径とは0.45インチになりますので、必ず本来は数字の前には小数点を付けて表示するのが、正式なのですが、ここでは小数点を省かせていただいています。
ですので有名な0.44インチの直径を持つマグナム拳銃弾は、「.44(口径)マグナム弾」と表記すべきですが単純に44マグナム弾と、表記させていただいています。また読み方も、44マグナム弾の場合は「よんじゅうよん・まぐなむだん」と、2桁は10進法で、逆に357マグナム弾のように、3桁以上のものは「さんごうなな・まぐなむだん」と数字の並びで、読んでいただくつもりで、表記します。
その理由は、簡単に言えば「アメリカの現地の呼び方」を参考にしたものだと、御理解下さい。映画を見ても決して、ダーティ・ハリーに扮するクリント・イーストウッドは、「フォーフォー・マグナム」ではなく、「フォーティフォー・マグナム」と呼んでいます。
逆に357マグナム場合は、そもそもが通常のこの場合38口径ですが、それと同じ口径で在る事から、差別化を図りたいのか、同じ口径でも銃身内で渦巻き状に掘られた溝(ライフリング、これにより弾頭は進行方向に対して、横回転を与えられ、与えられ無い場合よりも遙かに安定した直進性を、得る事が出来ます。)。当然ですが、溝の山同士と谷同士では僅かに直径が変わります。
通常は谷同士の直径で口径を決めますが、銃弾の都合によっては山同士の直径を用いて、銃弾の名前を決めます。この為38口径の銃弾なのに、357マグナムと38スペシャルという銃弾が存在します。なおこの場合は、標準の口径とは異なるので3桁でも、「さんびゃくごじゅうなな」とは呼ばず、「さんごうなな」と数字の並び読みになります。
アメリカ以外の主にヨーロッパの国では、イギリスを除いてメートル法で統一されている為に、ミリ単位の口径の大きさ表示を行いますが、例えばアメリカ製の銃の口径や銃弾の種類を呼ぶ時には、慣例としてインチ表記を使うようです。
ですが、アメリカが主導権を持っている有名な「北大西洋条約機構」通称NATOと呼ばれる組織の、連合軍では銃器や銃弾が共通しないと、非常に不便ですのでいわゆるNATO弾というのは、欧米共通でメートル法を用いています。
特に、機銃(重機関銃からライフルまで)用の銃弾は口径ミリ×薬莢の長さで示されるので、NATO弾以外の機銃弾とはまた違うややこしさがあります。
なお基本的に拳銃弾でもそうですが、口径が20ミリを越えると銃弾ではなく、砲弾となります。
これはインチ表示では、ほぼ55口径に当たります。ですので、現在拳銃の最大口径はこの50口径で、これを越えると拳銃用でも機銃用でも一応「砲弾」という表現になると思います。
〈50口径マグナム弾の威力!?〉
ここで面白いのは、フルメタル・ジャケット(FMJ)タイプの世界を2分している拳銃弾、45ACPと9ミリ・パラベラム弾の双方の威力が、実はこの軍用弾頭(FMJタイプはその名の通り、弾頭全体が鉄や真鍮製のカバーに包まれています)に限り、ほとんど同じだと言う事です。
ちなみにFMJタイプは軍用で、警察や治安司法機関などと民間用の場合は、弾頭の鉛が露出しているホロー・ポイントと呼ばれる、貫通力は弱い変わりに命中直後の破壊力の大きい弾頭が使用されます。これは、民間人の犯罪者等の相手をする場合、まず1撃で相手の行動力を奪える事。それから、うっかり貫通させて背後の一般人に、間違っても二次被害が及ばない事が理由だそうです。
軍事目的の場合は、前線の敵兵を1人でも多く減らす事が目的ですので、何も確実に致命傷を与える必要はありません。むしろ1人に怪我を負わせれば、その1人を後方に運ぶ為に他に2人以上の兵士が必要となり、1発で3人分の兵力を減らす事が出来て、効率的だというのですが、さて‥‥‥。
〈拳銃弾、9ミリ・パラベラムと45ACPの比較〉

〈拳銃弾比較・左から、44マグナム/
38スペシャル/45ACP/9ミリ・パラベラム
(9ミリ・ルガー弾)/25ACP〉

〈左9ミリ・パラベラム、右の45ACPです。
これが、弾頭鉛露出型のホロー・ポイント弾〉
また現在最大の機銃弾(重機関銃からライフルまで含みます)はNATO弾では、12.7×99ミリでこれはアメリカの50BMG(50口径、ブラウニング・マシンガン弾)と同じです。
例外として、元々旧ソ連で第2次大戦中に対戦車用ライフル弾として開発された、非常識な大きさと威力の機銃弾カートリッジがあります。
それが現在もロシアを中心に、広く旧東側の戦闘ヘリコプターなどの、機銃弾として普及しているこの14.5×114ミリ弾です。
《機銃弾の実際の大きさ》

〈12.7×99ミリ・NATO弾の大きさ比較〉
ダミーですが、NATO弾最大の機銃弾(元々重機関銃弾で、現在でも戦闘ヘリを始め戦車などに搭載されている機銃用に、使用されています。)で、大きさを現すネーミングの数値は、12.7×99ミリNATO弾!
《CG画像による機銃弾の大きさ比較》

〈向かって右から2つ目、規格外の元ソ連製14.5×114ミリ
弾。実用の機銃及びライフル用の銃弾としては、文句無く最大。
その右隣が、通称50BMG(50口径ブラウニング・マシンガン)
現在、最大の12.7×99ミリNATO弾です。右端のガトリング
機銃用20ミリ弾頭は、「
20ミリ以上は銃弾ではなく砲弾」
という規定により、もはや銃弾という枠には入りません。〉
12.7×99ミリ、NATO規格では最大の機銃弾です。
同じものですが、50BGMとも呼ばれているのはこれがアメリカ製で、自動銃器作りの天才ジョン・ブラウニング(日本ではブローニングの方が有名ですが、発音としてはこちらの方が正しいそうなので、ブラウニングと表記させていただきます)が何と、第二次大戦末期に自らが設計したM2重機関銃用の機銃弾として、開発したものだそうです。

〈ブラウニング・M2重機関銃〉

〈P-51H戦闘機〉
余り楽しくない歴史ですが、この機関銃と銃弾はその第二次世界大戦でアメリカと戦っていた日本に向けて、多く使用されました。
戦争の末期に投入された、アメリカ陸軍の戦闘機P-51・ムスタングなどの機銃として搭載され、民間人に対する機銃掃射などにも使われました。
特に敢えて、昼間の焼夷弾による絨毯爆撃とP-51の低空を低速で飛ぶ能力及び、その時の機銃掃射の威力を、《
実験的》に行ったと言われている、1945年05月29日に行われた「
横浜大空襲」では、101機のP-51の一部が非戦闘民間人を狙い撃ちにするという、当時でも戦時の国際法違反で、多大な被害が出たそうです。
また、密集爆撃の為に517機ものB29が、平均すると20センチに1発の間隔で、焼夷弾を集中的に木造住宅密集地に投下し、焼け野原としました。この規模は、あの1945年03月10日の「
東京大空襲」を、
遙かに上回るものでした。
ついでですが、その日本と戦った第二次大戦時からつい最近まで、アメリカ軍の正式採用拳銃だったコルト・ガバメント。
正式名称が、コルト・オーマチック・ピストル1911A2、その味気ない正式名称が示す通り、開発は1911年です!そしてその為に開発されたのが上の写真の、45ACP弾(ACPとはオート・コルト・ピストルの略、そのままです!)。
その上更に、その45ACPと世界を2分する自動拳銃弾が、これも上の写真にある9ミリ・パラベラム弾ですが、これは何とあの第1次大戦で、ドイツ軍の正式拳銃として採用されたルガーP08用に同じく1908年に開発したのが、9ミリ・ルガー弾です!これがそのまま、今日の9ミリ・パラベラム弾として、現在はアメリカ軍も採用しています)ちなみに、1908年とは日本では明治41年で、1911年は明治44年になります。
〈ルガーP08〉

さて、今回話題にする
劇場版名探偵コナン『異次元の狙撃手(スナイパー)』では、タイトルにも在る通り「狙撃」がもう1人の主役級の活躍?をします。
そして、映画の冒頭でいきなりその遠距離狙撃の、脅威が見せ付けられます。
その主役とされたのが、MK-11と呼ばれる狙撃用セミ・オート・ライフル(フル・オートは引き金を引き続けたまま連射できる事で、セミ・オートは1度引き金を引けば1発を発射出来る機能です。)です。
これに対して、狩猟や狙撃用の長射程ライフル銃に良くあるのが、ボルト・アクション式と呼ばれる、単発式です。自動式と違って、1発撃つ度に射撃手がボルトを引いて、空薬莢を排出して狩猟用の場合には、ここで更に狙撃手が1発ずつ弾込めをするものが主流です。
軍事及び司法公安機関用の場合は、現在では数発から数十発の弾は、自動的に装填されます。単発式は、より構造が単純で銃弾の発射エネルギーを、まさに発射の為だけに使える上、手入れも容易なので趣味の狩猟や競技には向いています。
しかし戦場やどんな武器を持っているか分から無い、犯罪者やテロリスト相手にはやはり不向きなようです。
MK-11(主に軍用、民間用はナイツSR-25)
使用銃弾
7.62mm×51・NATO弾(308ウィンチェスター弾と同じ)

アメリカ海軍と同海兵隊で「MK-11」の名で採用されているほか、2005年には同陸軍のM24-SWSの後継として、本銃の発展型が「M110-SASS」の制式名で採用された。なおUSSOCOMでは、既存のMK-11を、M110のアッパーアセンブリに換装したモデルを「MK-11・Mod1」、M110のコンプリートモデルを「MK-11・Mod2」としている。またアメリカ国外では、イスラエル国防軍とオーストラリア軍で本銃が採用されている。
M110採用後は、SR-25はシビリアンモデルの名称となり、M110に準じた仕様に更新された。
フォアエンド部はRASからURX(Upper Reciever eXtending)に置き換えられ、ボディはアンビのマガジンリリースとボルトリリースボタンを備えたものとなり、カートディフレクターはオプションではなく、オリジナルAR同様のレシーバー一体型とされた。名称も「SR-25 EM(Enhanced Match)」へと改められている。

《前略》
〈アメリカ合衆国海軍〉
海軍のMK-11・Mod0 Sniper Weapons Systemは、このSR-25を基に開発されたライフルシステムであり、銃本体の他に装弾数20発のマガジン、クイックデタッチ(素早く着脱可能な)スコープリング、リューポルド製 Vari-Xミルドット光学スコープ、ハリス製バイポッド、ナイツ製クイックデタッチサプレッサーそしてバックアップ用のアイアンサイトが標準装備されている。MK-11・Mod0は、米海軍特殊部隊SEALsの要求事項を満たすように開発された。
米海軍での採用後のMK-11既存の銃の中でも非常に信頼性が高く、また、最も精度の高いセミオート狙撃銃の一つであるとして世界中で認知されるようになった。 このMK-11・Mod0は308ウィンチェスター弾とほぼ同一規格のマッチグレード7.62×51mm NATO弾を使用する。
ナイツアーマメントによると、このシステムの最大の売りが銃身のフリーフローティングを実現する、レールシステムであるという。これによって銃を保持している時や、バイポッドを使用して地面に依託している際にもレールハンドガードを介して力が銃身に掛からず、最高の精度を発揮する。長さ288mmのナイツアーマメント製レールシステムも、素早く取り付け外しが行える。
このMK-11は同じくナイツアーマメント製のXM110-SWSと外観が非常に似ているが、レールシステムが異なるほか、ストックが折りたたみ式になっており、さらに銃口には一体型のフラッシュサプレッサーが搭載されている点で異なる。
〈アメリカ合衆国海兵隊〉
アメリカ海兵隊ではSR-25M(上述のMk-11と同一の銃)をスナイパーライフルとして使用している。
2005年11月、海兵隊はイラクに派遣されている海兵隊の第二外遣隊司令官などからの要求を受けて、180丁のMK-11・Mod0を導入すると発表した。現在海兵隊で使用されているM-40スナイパーライフルは都市部での狙撃任務に適さないという報告が来ているという。
主武装をM40A3にする場合、狙撃位置の変更を行う際の自衛用に2丁の銃(M16A4とM9拳銃)を副武装として携行する必要があるが、SR-25は装弾数が20発あり、1丁で狙撃から緊急時の自衛射撃も行えるという。
引用者註:M9拳銃とは1世紀近くに渡って、アメリカ軍の正式拳銃だった45コルト1911A2(通称は官給品を意味する「ガバメント」)の45ACP弾に代わって、新しく採用されたアメリカ軍正式採用の拳銃ベレッタM92の事です。
当然弾丸も9ミリ・パラベラム弾に、変わりました。アメリカ軍が正式採用銃器に、自国のものを採用しなかった事は極めて珍しく、色々と物議を醸したようです。

〈ベレッタM92〉
(現在はM9が正式名称だそうです。)
《後略》
アメリカのチェイ・タック(Cheyenne Tactical/シャイアン・タクティカル)社が販売する大口径ボルト・アクションライフル。
M200インターベンション(調停、介入)は、チェイ・タック社がLRRS(超長距離射撃用ライフルシステム)と呼んでいる、弾道計算用コンピューターと同社独自の408チェイ・タック弾をセットとしたシステムの中核となるライフルである。
ライフル本体は、同国の大口径ライフルメーカーであるEDMアームズ社が製造しているもので、同社が1996年から製造・販売している『ウインドランナーM96』とほぼ同等の製品である。M200は、これを元に408チェイ・タック弾に合わせて設計された。
408チェイ・タック弾は、338ラプアマグナム弾と50BMG(12.7×99mmNATO弾と同じ)の中間にあたる弾薬で、.50BMGより低反動ながら、338ラプアを超える2km超の長射程を実現している。
またPDA型の弾道計算用コンピューター「ABC」が付属し、気候条件などを反映するのに必要な、射手自身のノウハウに基づいた煩雑な暗算を肩代わりし、かつ精密な長距離狙撃が行えるようになっている。さらに印刷された弾道計算用のデータ集も付属しており、電池切れ等の不測の事態にも考慮されている。
ただ、これだけの性能があっても、408チェイ・タック弾の製法が特殊で、大量生産に向いていないことから、軍への大口採用のネックとなっているようだ。しかし、この特殊弾の超遠距離における精度の高さは、ホビーシューターには注目されており、小型版の375チェイ・タック弾と共に、様々なライフル用のコンバージョンキットが販売されている。
M200には、通常モデルの他、短銃身タイプの「M200カービン」や、CFRP製の軽量ストックモデルなどのバリアントが用意されていたが、現在は名称が統一され、仕様の違いはオプションとなっている。
さてこうなって来ると、そもそもライフルの射程距離や威力は、何で決まるのか?という事が、何よりも問題となってきます。
もちろん答えは、銃弾です。ここで重要なのは、
どんな銃器が優れていても、使用される日本語では実包。通常はカートリッジと呼ばれる、現代のスタンダードな銃弾のスタイルがあります。
これは、拳銃弾でもライフル弾でも、基本構造は同じです。では、その基本構造はどうなっていて、何を持って優れた銃弾。あるいは優れた銃器と言うのか?を考えてみます。
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