「何これ?
ガルパンの海戦版かい!?」とでも思われていた謎のオリジナル・TVアニメ・シリーズ
『ハイスクール・フリート』の展開がそれなりに、楽しくなって来た気がします。
そもそも、なぜか航空機が存在しない、未来的ファンタジー世界。TVアニメ・シリーズ「フライング・ウィッチーズ」に似ていますが、スッタフがかなり共通いているので、それも頷けます。意外だったのはキャラクター・デザインが、あの田舎風癒し系ホノボノ・日常アニメとして知られる、「
のんのん日和」と同じ人だと言う事です。
これで緊迫した海戦アニメを期待するのは、そもそも難しいでしょう。
ところが、思わぬ方面から展開は
ハード&シリアスなSF展開へ。
マァ、ツッコミ所は満載ですがそれ言い始めたら、そもそも「
ガルパン」だって見られません。物語展開により、レーダーなどの近代的電子装備がほとんど使えなくなり、文字通り第2次大戦中の旧日本軍の軍艦のように、「
目と耳が頼り」の状況で戦艦の砲撃を避けながら、航洋艦と言う名の巡洋艦的な駆逐艦?で、対マン勝負!普通なら絶対に、勝つ見込みは無いのですが・・・。
と言う訳で、最近一番盛り上がった思うのが、『
ハイスクール・フリート(High School Fleet)』
第08話「比叡でピンチ!」です。
ただこれ、事前説明がかなり必要なんですよねェ~。
《概要》
『ハイスクール・フリート(High School Fleet)』 は、日本のテレビアニメ作品。
2016年04月よりBS11、TOKYO MXほかにて放送中。略称と漫画版のタイトルおよび第01話終了まで公表されていた名称は「はいふり」。
飛行機が存在せず、日本の低地の大半が海中に沈んだパラレルワールドを舞台に、海を守る職業に就くことを目指す学校に入学した女子生徒たちの姿を描く。
海が舞台ゆえに多数の船が登場するが、学生の練習用という設定で大日本帝国海軍時代に建造された艦船も登場する。
《あらすじ》
今から100年ほど前、日露戦争の後日本はプレートの歪みやメタンハイドレートの採掘などが原因でその国土の多くを海中に失った結果、海上都市が増え、それらを結ぶ海上交通などの増大に依り海運大国になった。
その過程で軍艦は民間用に転用され、戦争に使わないという象徴として艦長は女性が務めた。これが「ブルーマーメイド」の始まりであり、女子学生の憧れの職業となっていった。また、かつての軍艦のなかにはブルーマーメイドを育てる教育用の船、教育艦として使用されるものもあった。
幼い頃、岬からブルーマーメイドの旗艦・大和を見た岬明乃と彼女の幼馴染の知名もえかはお互いブルーマーメイドになろうと誓いを立てる。その後明乃は別地に引っ越す。時は流れ、9年後。神奈川県横須賀市にあるブルーマーメイドを養成する学校「横須賀女子海洋学校」に明乃は入学。そこでもえかと再会する。その後、入学者たちは教育艦に配属され、明乃は晴風の艦長に、もえかは武蔵の艦長に任命される。
晴風に乗艦した明乃は海洋実習に参加すべく、艦を出港させる。だが、彼女たちを待ち受けていたのは明るく楽しい学校生活ではなく、様々な出来事に翻弄される運命であった。
〈以下略〉
《用語》
●ブルーマーメイド
劇中の日本における海の治安を守る女性の職業。
女子学生にとっては花形の職業であり、劇中の根幹を成す存在。艦船のカラーリングは基本的に喫水線より上は黒地に水色の斜線がある。女子学生の間では「ブルマー」と省略で呼ばれている。
正確には安全整備局内のいち組織であり、ブルーマーメイドを監督しているのは整備局内の「安全監督室」と呼ばれる部署のようである。主に日本領域海の治安維持や救助活動などの活動をしている。現監督室長は宗谷真霜。
なお、同様に海の治安を守る男性の職業も存在し、そちらは『ホワイトドルフィン』と呼ばれている。
●横須賀女子海洋学校
横須賀にある、ブルーマーメイドの養成学校。校舎は壁面にレンガを用いるなど、古式ゆかしい洋風建築となっている。
制服はセーラー服だが、「晴風」のクルーの場合は役職によってさらに追加物がある(明乃なら艦長帽、美波なら白衣など)。明乃やもえかの様な新入生は第二十一期生に当たる。現校長は宗谷真雪。
本校所属の艦船は基本的にYから始まる艦番号ないし艦籍番号を持つ。また、艦船のカラーリングは基本的に喫水線より上は黒地に赤の斜線があり、艦首に艦番号、艦尾に艦名が白文字(後者はひらがな表記)で記載されている。喫水線より下は赤地である。
また本校を始め各校にある訓練艦は旧式化した艦艇が払い下げられて使用されている。
●海上安全整備局
劇中の日本における海の治安を守る組織。
先述の横須賀女子海洋学校や安全監督室という部署はこの組織の傘下に位置する。他にも海上安全委員会という組織が会話の中で出てくるが詳細は不明である。直属の艦隊を保有しており、普段は治安維持のために世界各地の海洋に展開している。
〈以下略〉
《艦船》
●晴風(はれかぜ)
陽炎型航洋艦。
全長118.5m。全幅10.8m。基準排水量2,033t。機関出力65,000hp。速力37ノット。艦番号Y467。
横須賀女子海洋学校所属の航洋直接教育艦で、明乃達が運用している艦である。試験用の機材を搭載しているため同型艦よりも高速ではあるが、機関の高圧缶は故障も多く、その分安定性に欠ける。
第03話までの戦闘で船体や砲塔を含む装備が損傷するが、第04話で「明石」と合流した際、損傷箇所は修理された。その際、「明石」の乗組員の工作により損傷した砲塔も含め、主砲は長十糎高角砲に換装された。兵装類は本家の陽炎型に準じているが、電子装備は近代化され、砲塔も旋回は手動だが、装填のほうは自動装填機構が備わっている。
また、主砲の実弾は艦長と副長の両者が各自で持つ特殊な鍵で解錠しなければ発射出来ない。艦長は岬明乃で、副長は宗谷ましろ。
〈モデルではと思える旧日本海軍の
陽炎型型駆逐艦・
初風〉

●武蔵(むさし)

〈本当に「武蔵」かな?大和型側面全景〉
横須賀女子海洋学校所属の超大型直接教育艦。艦番号はY118で、艦長は知名もえか、副長は村野憧子。
自動化されているため、「晴風」と同じ乗員数(生徒数)で運用される。成績上位の者が乗員に選ばれ、「大和」の姉妹艦なため、将来的に「大和」に乗艦する事を約束されているいわば「大和用の練習艦」。艦長は将校服を着用する。
圧倒的な火力と耐久性に加え、的確な命中精度と駆逐艦並みの旋回力を発揮していることに、ましろをはじめとする晴風乗員を驚愕させている。
●明石(あかし)
横須賀女子海洋学校所属の工作艦。
艦番号はY2302。海上安全整備局の平賀と補給艦「間宮」と共に「晴風」の下に現れ、砲塔や甲板等を修理を行う。西之島新島沖の演習の後に「間宮」と共に艦隊に合流する予定だったため、事態を把握していない。艦長は杉本珊瑚。
●間宮(まみや)
横須賀女子海洋学校所属の補給艦。
艦番号はY2201。海上案整備局の平賀と工作艦「明石」と共に晴風の下に現れ、トイレットペーパー等の足りない物資を補給を行う。西之島新島沖の演習の後に明石と共に艦隊に合流する予定だったため、事態を把握していない。艦長は藤田優衣。
●比叡(ひえい)

〈比叡最終形態?側面全景〉
横須賀女子海洋学校所属の大型直接教育艦。
艦番号はY102。行方不明になっていた教育艦のうちの一隻で、型は古いものの改装により新鋭艦にも劣らない。
晴風がある海域で捕捉し追跡していたが、幸子の分析でトラック諸島という人口密集地に進路を向けていることが判明。感染拡大を阻止すべく、晴風は比叡と交戦を決意する。
艦を座礁させる作戦を開始し、一度は窮地に追い込まれるものの、潮汐を利用したトラップにより浅瀬で座礁し機関を停止。増援に現れた宗谷 真冬が乗艦するブルーマーメイド艦に保護される。
〈以下略〉
《第08話・あらすじ》
濃霧を航行していた「晴風」は戦艦に遭遇(引用者註:この時、その艦影から観測手が「武蔵」と誤認する)。
程なくして霧が晴れ、改めて距離と艦影を確認すると比叡であることが判明する(引用者註:この時「大きさ以外は、よく似ていますからね」と言う話しになるのですが、「武蔵(大和型)」と「金剛型戦艦の比叡」が似ている?と言うのが、気になりました)。
思案する最中、比叡が発砲。
それを受け、速力をあげて比叡の攻撃範囲外に退避を決断。状況をブルーマーメイド本部に連絡し、派遣部隊が到着するまで距離を取って比叡を監視せよと命じられる。だが、幸子が比叡の行動を分析した結果、トラック諸島に向かっている事と派遣部隊が到着前にトラック諸島に到達することが判明する。小動物のウイルスによる感染拡大を防ぐため、明乃たちは比叡の航路を妨害することを決意する。
同じころ、学校では真霜が校長のもとを訪れ、自らの調査結果を報告する。
彼女は小動物は研究中に偶然生まれた特殊な生命体、通称RATtと呼ばれるものであり、様々な経緯を経て猿島がそれを回収したのだが、その際、猿島の乗員が感染。それが原因で暴走が起き、今回の事件が起きたと告げる。その頃、晴風は船速を活かして比叡の航路を妨害していたが、機関科から船速の維持ができないこと報告され、明乃たちは決断を迫られる。そこに猫たちのやり取りを見て明乃はある作戦を思いつく。
明乃は校長と通信を行い、現状の報告とそのうえで立案した作戦の許可を求め、それを聞いた校長は乗員の意思統一を行うことを条件に許可を出す。
明乃は乗員たちに作戦内容の説明し、自らの思いを語る。それを聞いた乗員らは作戦に同意する。作戦は実行され、艦の喫水を利用して比叡を座礁させることを狙うが、予定ポイントで座礁させることに失敗し、窮地に追い込まれる。だが、明乃が考えていたもう一つのポイントで座礁させることに成功する。
比叡の監視を兼ねて艦を停泊していた所、派遣部隊が到着。
その要員である宗谷 真冬が明乃たちの前に現れるが、彼女の行動に一同呆れてしまうのであった。
〈以下大幅略〉
さて、第二次大戦時の太平洋戦線(日本側の呼称は「太平洋戦争(主に海軍)」「大東亜戦争(主に陸軍)」ですが、ここは海と戦闘艦のお話ですので)通称・太平洋戦争時の、旧日本海軍の戦艦や艦艇を原型として名前と共に、ドバドバ出て来るお話です。
ですが、飽くまでも別の世界で別の時間軸に沿うという、現在ありがちな設定ですので余り野暮なツッコミは、極力避けたいと思います。そこで、太平洋戦争中最も活躍したと言われる「金剛型戦艦」ではありますが、その中でも数奇な運命を辿った、「比叡」と旧日本海軍最後にして最新鋭の、「超弩級戦艦大和型の武蔵」が《
似ている?》何て事が、有るのでしょうか!?
何しろ金剛型戦艦の一番艦「金剛」は、日本がイギリスに発注して製造して貰った、歴史上最後の戦艦です。
つまり純英国製の戦艦であり、しかも当時の英国設計者が自国海軍の我が儘の為に(軍が我が儘なのはどの国も似たような物だったようです)、思うように設計できなかった!その鬱憤を思いっきり吐き出し、あらん限りの知恵を絞って当時最高の技術と斬新なアイディアを、ふんだんに盛り込んだ結果として最上級の戦艦が完成したのだという説があります。
そして完成品として、日本に渡った戦艦はその膨大な設計図と資料、さらには予めその為に日本から派遣された造船技術者達の手により、榛名・霧島・比叡と計4隻もの同型艦が誕生しました。実はこの日本製金剛型の造船には、初めて民間企業が軍から完全委託されて、丸々1隻の戦艦を建造するという事になりました。ところがその事が、例によっての軍の無理難題(主に工期)に振り回され、様々な逸話や悲劇を生んだそうですが今回は触れません。
詳しくは、《
フリー百科事典・ウイキペディア『金剛型戦艦』(Wikipedia・リンク済み)》を、御参照下さい。
そこにも記されているように、比叡は最終的に「
後の大和型戦艦に導入される新技術のテスト艦となり、他の姉妹艦よりも
大和に酷似した艦橋を持つことになったことが知られているが、他にも主砲旋回部に旋回速度の速い水圧機関を導入するなど、他3艦とはかなり違った艦となった。」と言う事が、視界の悪い状態で「視認」でしか確認できない場合、「武蔵」と見間違うのも無理は無い。という、事態の根拠となります。
ちなみに、この物語では当然レーダーなどの近代設備も搭載されていますが、特殊な状況によりほとんどの電子機器が、使用不能となっています。その為、索敵は主に肉眼に頼っています。
〈「武蔵」と「比叡」の正面比較〉


〈似てるかな?左「比叡(?)」右「武蔵(?)」〉
1913年に純英国製の1番艦「金剛」が完成しましたが、当時としては超大型艦(これを超弩級艦と呼ぶようになります)だった金剛は、イギリスから日本への回航中当時のスエズ運河が大きすぎて通れなかった為、喜望峰周りで日本に向かいました。
その結果、金剛に遅れてその資料と派遣された技術者の一部も参加して、建造された2番艦の「比叡」の方が先に日本で竣工し就役しました(実は2番艦の資材のほとんどは、イギリスからの半加工品だったそうです)。いずれにしても、第一次世界大戦が始まる1914年には、日本は世界に誇る最新鋭超弩級戦艦を2隻も所有していた事になります。
これは同時に、1941年に始まる太平洋戦争時ではこの金剛型は、最も古い戦艦と言う事である意味軽く見られ、同時に搭載する砲も大きく船体も大きくなる一方の現行戦艦が、どうしても速度の問題で高速機動部隊との連携が難しく(当時の「長門型」では巡航最高速度25ノット。「大和型」では同27ノット)なっていました。
主力空母の「赤城」が31ノット・「加賀」が28ノット(共に戦艦からの改装)、正規空母「飛龍」が34ノットと基本30ノットを超える事が必要でした(加賀は当時としては大型の広い飛行甲板を持つ、実に安定した空母でしたが速力だけは「
一番遅い」と、評判だったようです)。
その上、
自ら招いた航空戦力優位の状況でありながら、海軍司令部は艦隊決戦で雌雄を決するという、妄想にも似た概念に取り付かれていたと言います。
その結果が、切り札である
大型戦艦の温存。冷暖房完備の、大和ホテル&武蔵御殿の、誕生となる訳です。もちろん、
これらには1つ1つ異論・反論があるのも事実ですが、ここではこれ以上掘り下げません
逆に金剛型は、その巡航最高速度30ノットという快速を生かし、しかも小回りが利くというまさに巡洋艦並のフットワークと、長門型の41センチ主砲に比べれば35.6センチ主砲は、ハッキリと見劣りがします。しかし金剛建造時の海軍の共通認識「
速度こそ最大の防御」に立てば、全速航行中でも全門斉射出来る!(実戦例の記録は無いようです・・・)というのは、護衛は元より高速戦艦の名に恥じ無いモノです。
この為、この最年長四姉妹戦艦は長女金剛を筆頭に、連合軍が戦後にまとめた総括報告書の中でも、「
太平洋戦争中最も活躍した戦艦」として堂々と「
金剛」の名が上がっています。
と言う訳で、何だか《
金剛型戦艦賛美!》みたいな事になっていますが、じつはこの『
ハイスクール・フリート(High School Fleet)』という物語の、特に
08話「比叡でピンチ!」に関しての内容にまるで触れていませんが、実はこの物語世界に出て来る艦船で、主人公ヒロイン達の乗船する《
航洋艦(巡洋艦?)
・晴風》は、モデルになった旧日本海軍の戦闘艦らしきモノは無く、恐らくモデルはこれだろうと思えるのが〈
陽炎型駆逐艦・初風〉です。
〈実際に存在した旧日本海軍「
陽炎型駆逐艦・初風」〉

〈同型艦で戦後まで生き残った「雪風」は有名です〉


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