既に次号が発売されているのに、今更感満載で森薫著の『乙嫁語り』が目的の「ハルタ・Vol55・2018年6月号」です。
《お詫び》
2018年12月15日に発売されましたコミックス『乙嫁語り』第11巻の中で、作中の写真機は乾式の「ダゲレオタイプ」では無く、湿式の「コロジオンタイプ」だと、作者が後書きで明言されています。この記事の最後に〈註〉としてその可能性を、示唆しておりますが残念ながら的中のようです。ただそこにも記した理由で、ここでは飽くまで「ダゲレオタイプ」として、記述させていただきます。
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既に次号である「ハルタ・vol56・2018年7月号」が発売されているのに、今更感一杯ですが惰性と笑われても仕方有りません。
今回の主役は何といても、このカメラです。
ダゲレオタイプとよばれるこの日本語で「銀板写真機」は、世界で最初に普及した写真機と言って、差し支えないでしょう。そもそもは「暗箱にレンズと感光剤を塗った板を入れただけのモノ」で、本体は重いは大きいは、露光時間は野外でも数時間と,基本的に実用に耐えうるシロモノでは無かったのです。
他にも同様の原理を利用した、写真機といえるモノもありました。ですが、本格的に商品として普及させる為に、改良を重ね実現化したのが、このダゲレオタイプだと言う事に関しては、異論の無いところでしょう。
余り知られていない事かも知れませんが、この写真機はガラスに塗った銀溶液を直接露光し、後の化学処理でその陰影を浮き出させる仕組みでした。
つまり、後のネガ・フィルムから感光剤を塗布したプリントを、何枚も作れるようなモノではありません。感光と定着に成功した1枚のガラス板のみが、写真として残る後のスライド用のポジフィルム(ポジポジ)と同じく、背後から光を当てて鑑賞するタイプの1枚だけの写真が、残るモノでした。しかも定着技術が成熟せず、ガラスの上の陰影は簡単に崩れてしまうようなモノだったので、なるべく早く別のガラスでカバーする必要がありました。
更に露光時間が短縮されたと言っても、明るすぎてもダメ暗すぎてもダメ(現在のカメラに必須の光量を調節する「絞り機能」が無く、レンズのキャップを開け閉めする現在のシャッター時間が唯一の光量調節機能でした)で一定の明るさで、数分から数十分は露光が必要でした。
この為、現在に残るこのタイプで撮影された肖像写真には、笑顔が無く(笑顔を一定時間維持するのは困難です)当然体を固定する為に、椅子に座るだけで無くその背後で、拘束具にも似たもので動けないようにしていたようです。
〈詳細は黒沢清監督の『ダゲレオタイプの女』に描かれています〉
註:この作品は海外制作のサイコ・ホラー映画です。
以下のカメラが、まさに持ち運びを前提としたダゲレオタイプの決定版とも言うべき、当時の長期海外(製造国はイギリス)旅行の必需品ともなった、ダゲレオタイプの写真機です。
もちろん、『乙嫁語り』の物語中に登場するのが、この機種とは言えません。ほとんど職人手作りの、超高級品ですから、誰でも持ち歩けるモノでもありません。
少なくとも、荷物持ち役の使用人が雇えるほどの人物か、その後援を受けて旅する学者兼冒険家で無ければ、無理でしょう。まさに大英帝国の最盛期だからこそ可能であった事は、この木製のダゲレオタイプが衰退し、代わって金属製のカメラとネガポジ反転式の湿式と呼ばれる、後のロール式フィルムが普及するようになり。イギリス製のカメラが事実上、写真の歴史から消えて行く事からも、分かります。
後にライカ製の小型カメラが、ドイツから世界に躍り出ると、カメラ生産国として(後に日本も・・・)世界中で、知られるようになります。
1909年、英ホートン&サンが発売したこのカメラの特徴は、なんといっても美しい木製ボディ。
名前につけられた「トロピカル」という名称は、赤道付近にある島々で使用に耐える木製素材と加工を意味しているが、ボディの上質な仕上がりに目を奪われてしまう。
〈折りたたんだ携行状態〉
〈註:引用・https://muuseo.com/square/articles/125〉

〈これが、これからスミスさんが持ち歩く、
ダゲレオタイプのカメラです〉


〈テスト撮影のモデルにタラスさんとは、確かにス
ミス氏にとってやる気の出る被写体でしょう・・・が〉

〈ダゲレオタイプには、様々な問題があります。
まず、カメラのファインダー(ビューアー)に映る
像は逆さまで、場合によっては左右逆像です〉

〈感光板を銀溶液に浸しますが、実際の現像は水銀蒸気に晒す事です。これにより、感光した銀が化学反応でその感光量により黒い濃淡に変わります。
しかしこの後も、感光は進むのでそれを止める作業が現在「定着」と呼ばれる、塩化ナトリウム(ただの塩ですが、後に「ハイポ」と言う名で水道水内の消毒用塩素を中和できる事から、養魚家や水生生物飼育者から重宝された「チオ硫酸ナトリウム」の溶液でも、同様の事がより早くできる事が知られ、広まったそうです)の溶液に浸す事により、感光による化学変化が止まります。
しかし、この光で黒くなる現象は止まっても、ガラス板の上に塗られた銀が乾けば崩れやすい事に、変わりはありません。その為、よく写った感光版には定着乾燥させた後、別のガラスで上から覆います。つまりダゲレオタイプ写真のオリジナルは、この世にそれ一枚しか存在しません(現在見ているのは当然オリジナルから起こした、複製写真です)。
しかも鑑賞する時には、現在のスライド写真同様後ろから光を当てて、透かして見るしか有りません。更に上下逆像は、写真を上下反対向けにすれば済む事ですが、左右逆転は撮影機のレンズの前にプリズムを置く事で、左右を予め逆転した像を、感光版に当てる事で解消したそうです。これも、感光版の感度が驚くほど低かった事と、レンズがそれに負けずに暗かった事から、簡単な事では無かったと想像できます〉


〈当時の人々が、「記憶をもった鏡」と絶賛した事も分
かります。当時は、まだまだ鏡も貴重品でしたから・・・〉

註:現像作業の様子から、乾式のダゲレタイプでは無くその後に現れた、湿式のコロジオンタイプではないかとも思いましたが、湿式としてはその場で作った濡れた状態の感光版を使い、事実上暗室を持ち歩く必要があります。
上の絵にもありますが、ガラスに感光剤を塗った(と思われる)板を収めていた箱から、無造作に手渡しているところを見ると、やはりダゲレオタイプの乾式写真機だとここで勝手に断定します。
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