TVアニメ・シリーズ『サイコ・パス』第22話・最終回「完璧な世界」から最後はS&W・M500の4インチモデル!?
〈この記事は放映終了後『スターム・ルガー社製SP101がモデル』という情報が出る前に掲載したモノです。この件に関しては拙記事《驚きました!TVアニメ・シリーズ『PSYCHO-PASS(サイコ・パス)』には~(リンク済み)》に詳細がありますので、ここでは記事公開当時と同じ状態で掲載しています〉
使用される拳銃弾は、現在一般市場用拳銃弾として、これ以上は無理と言われる、最大最強のS&W500マグナム弾!
完全管理と制御で成り立つ、近未来電子社会を徹底した論理思考を武器にその剥き出しの人間性で襲う犯罪者!それに対する公安局の面々には、相手を追い詰める為の完璧なシステムも、全自動の犯罪認定兼処断システムを持った、最大出力なら分子すら残さずに、人間を消し去る事の出来る武器も、この相手には意味を為さない……。
完全で完璧なはずの社会に対し、剥き出しの人間性と鋭利な知性と、論理性で挑戦する犯罪者と、「法が人を守るのではなく人が法を守る!」法と正義と社会システムの矛盾と、それを支える余りにも脆弱な人間の心を知り。
それでもなお、あくまでも人と社会を結び付ける法という名の幻に、必ず人間の正義と信念が有ると信じて、一縷の望みを託す公安局の面々。
果たして、高度な知性と論理を持って、強靱な肉体と剥き出しの人間性を武器に、挑む犯罪者に対抗できるのは、か弱い人間性か剥き出しの野生の牙か?遂に決着の時が、来る!!
〈前略〉
銃身長は4インチと8インチ、そして「ハンターモデル」と呼ばれる10.5インチのものがあり、使用する弾は.500S&Wマグナムという.50口径のマグナム弾である。
この弾は.44マグナム弾の約3倍の威力を誇るといわれる。
そのため、フレームには特大フレームであるXフレームを使用し、シリンダーの肉厚を確保できる装弾数5発になっている。15フィートの距離から1インチ間隔に並べられた厚さ8分の1インチの松板を何枚貫通できるか、というテストでは17枚を貫通し、18枚目に傷をつけるといった結果が出ている。
その威力に比例して発射時の反動も相当なものになっているので、8インチモデルや10.5インチモデルはその反動を抑制するためにあえて2kg前後の重量を持たせている。
だが、それでも反動はすさまじく、「手の中で何かが爆発したような感覚」とまで言われる。
そのため、連続して射撃すると10発前後で手が痺れ、文字を書くこともままならなくなる。この症状は個人差はあるが、場合によっては数日間続く。このことから、後遺症を招く欠陥銃であるという意見もある。
ただし前述の通り、この銃は当初から「.454カスール弾を凌駕する、世界最強の威力を誇る拳銃」を目標として開発されたものであり、発砲後の怪我や後遺症などについては考慮されていない。
発売時の宣伝でも「人間の限界に迫ったスペック。安易にこの銃を撃った場合、射手の健康は保障できない」と注意が添えられているほどである。
〈後略〉
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と言う訳で後は、後は現在史上最強の拳銃と言われている、S&W・M500の事と、それが少なくともモデルとして使われた、『PSYCHO-PASS(サイコ・パス)』第22話・最終回「完璧な世界」の、クライマックスのお話です。
★当然、ネタバレは全開です!★
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『PSYCHO-PASS(サイコ・パス)』
第22話・最終回「完璧な世界」
(ひまわり動画で再生して下さい)
『PSYCHO-PASS(サイコ・パス)』
第1話「犯罪計数」
〈リンク切れを考慮して2つ用意〉
問題は、第22話の最終回を含むこの最終局面で、狡噛慎也(こうがみ・しんや、声・関智一)が、年輩?の同僚が隠し持っていた、リボルバー(回転式拳銃)を借りて影の主役ですら有る、ドミネーター《携帯型心理診断鎮圧執行システムとされているが、事実上はシビュラシステムの端末であると同時に、鎮圧対象の処断装置(最大出力で有れば分子レベルで分解し跡形も残しません)》の代わりに手にした、原始的で凶暴兇悪な拳銃です。
ちなみに、ドミネーターの声は日高のりこ氏が演じていますが、今までの「タッチ」の南ちゃんの声などからは、想像もできない耳心地の良い、冷淡で冷徹な最初は機械的だと思わせる、シビアな口調です。そして、彼女の声は同時にシビュラシステム全体を、代弁しています。
この事実は、最終的には常守朱(つねもり・あかね)監視官(声・花澤香菜氏)だけが知る事になります。
実はこの拳銃が、かなり気なっていました。
一応近未来SFですから、存在しない架空の拳銃という事も有り得たのですが、どうも少なくともモデルは、下の映像で御紹介する〈S&W(スミス&ウェッソン)M500マグナム・リボルバー〉の短銃身、4インチ・モデルではないかと思われます。
このように、先端のコンペンセイター(銃弾発射時の反動を和らげるいわゆるマズルブレーキ)が着脱可能で、好みのモノに取り換える事が出来ます。
もちろん無くても発射できますが、この映像で見る限りそれはデザイン上、想定されていない感じです。
なぜこの銃だと思ったのかは、まずこの極端に短く見える銃身です。
スナップ・ノーズと呼ばれる、回転式拳銃(リボルバー)特有の短銃身は、携帯に便利と言う事もあり、護身用として多くの種類がありますが、ここまで極端に短く見えるのは、おかしいのではないかと、思いました。そして、M500・4インチは銃身こそ実際には、3インチ+コンペンセイター(小型銃器のマズルブレーキ)で4インチですが、使用される銃弾は「拳銃弾でこれ以上は無理!」と言われる、現在拳銃弾として最大最強の規格外拳銃弾です。
驚くべき事に、小さい向かって左が映画「ダーティハリー」で有名な、44マグナム弾です。
その隣りの向かって右側が、問題のS&W500マグナム弾(50口径マグナム弾)です。ちなみに、この500マグナム弾の威力は隣りの44マグナム弾の約3倍と、S&W社は宣伝しています。
左手で発射するという、これまで右利きにしか見えなかったのに、ずいぶんと器用なヒロインですが、彼女の手の大きさと銃の大きさと形のシルエット。
そして何よりも、特有の多量の発射時に噴出する閃光と爆煙です。これは銃身の長さやタイプに関わらず、S&W500マグナム弾の特有の欠点とされています。上の映像でも、女性が撃つ時にその煙と炎に驚いています。
これは前述のフリー百科事典・ウイキペディアに、紹介されている画像です。
元々リボルバーは、構造上回転する弾層と、銃身の間に隙間が生じて、どうしても発射の際にガスや火炎そして音の一部が、広く両脇に広がります。よく知られているのが、銃口に取り付ける消音器(サイレンサー)を、リボルバーに取り付けても効果が薄く、意味が無いと銃器ファンに指摘されるのはこの為です。
逆にオートマチック(自動拳銃)は、その機構故に多くの場合その発射ガスは、銃身やスライドカバーの後退に必要ですので、基本的には外に漏れ難い構造になっています。その為、特に本来発射音の小さい、小口径ならばサイレンサーの効果は、かなりあるとされています。
ヒロインは恐らく初めて、本物の火薬カートリッジ式の回転拳銃(リボルバー)を、手にしたのではないでしょうか?
知識では知っていても、その圧倒的な重量感と大きさに、驚き呆れている気がします。もちろん、これがM500の4インチ銃身で有れば、現在でも「これが拳銃か?」と言う大きさと重さになります。後で明白になりますが、この手の野蛮な火器は対物用にも威力を発揮します。
ドミネーターは、飽くまでも対人用ですので、どんなに威力があり、相手を選んで威力を調節できる、いわば敵味方識別可能でも、車やモノを撃って壊すという風には、出来ていません。今まで良くそれで、問題がなかったと、ある種感心はしますが……。
完全電子管理社会の、落とし穴……が、ここにもあったようです。
この部分で、これが少なくともモデルはM500だと確信しました。
約12.7ミリの直径ですから、大人の指でも入り込んでしまう、化け物的な回転式弾層(シリンダー)です。
そして何よりも特徴的なのは、その余りのS&W500マグナム・カートリッジ大きさと、発射時の衝撃に耐えるために、実に肉厚に作られた弾層です。そして装弾数は5発!これはもう、少なくともモデルはS&W・M500と考えて、間違いないと思います。
細部まで描かれていないのですが、こうして仰ぎ見ると明らかに、先端部にコンペンセイターとおぼしき、穴のような刻みのようなモノが見えます。
これがあるので、この銃は女性でも撃てる!というか、むしろその為の護身用……と言う謳い文句が、S&W社にはあるようです。ホントかなァ~?
日本製のモデルガンですが、4インチ銃身の先端にあるコンペンセイターです。
何となく、作品の中の銃と似ている気がします。
さてここからが、第22話・最終回「完璧な世界」のクライマックスです。
ドミネーターでは、犯罪者と認識でない特異体質(物語の中では免罪体質)の、冷徹にして冷淡で皮肉屋でありながら、残酷なまでの非人間性をその凶暴性故に、剥き出しの人間性という価値観に置き換えられる、強靱な肉体と天性の余りある才能。しかし、現在の完全管理電子システム社会においては、その破壊と壊滅のみにしか価値観を見い出せなかった、徹底的な信念の犯罪者・槙島聖護(まきしま・しょうご、声-櫻井孝宏氏)。
彼を追い詰めたのは、結局いわば野生の牙を持つ、不屈の猟犬とも言うべき元(この時には既に執行官と地位を失っています)執行官・狡噛慎也か、それとも徹頭徹尾信念のヒュマーニストとでも言うべき、新米監察官・常守朱か?
彼女の信念である「法とは弱い人間が、弱いが故に自らを守る為に、長い時を掛けて細々と少しずつ積み上げてきたモノ。条文でもシステムでも無い、その思いが法という形になって存在する。だからそんなもの、怒りや憎しみに比べたら、簡単に壊れてしまう脆いモノ。だからこそ、守らなければならない。弱い人間の長い積み重ねを、思いを、無駄にしてはいけない。守らなければならない!」
生半可な理想主義や、順法精神など吹き飛ぶ!天晴れな、考え方です。
《人間(ヒト)は弱い、弱い故に法を作る。だからその法を守るのもまた、人間でしか有り得無い》これが、彼女の鉄壁に考え方なのでしょう。《法は法でしか裁けない!》確かにこれは、近代において確立した、法治理論の根幹を為す考え方です。同時に、これは自分達が守らない以上は、誰かの作為によって無謀な法が打ち立てられても、それに抗う術(あらがうすべ)はどこまでも、法でなくてはなくては成らない。憎悪や暴力では、せっかく積み上げた法の価値そのものを、破壊するしかなくなるという、アニメ製作者の痛切な、現在に対するメッセージのような気もして来ました。
そして物語はここで、まさに破壊と暴力に価値観を見出した犯罪者との、最後の決着を付けようとしています。
計画の失敗を悟って、食料トラックで逃げる犯罪者を、ヒロインはその後ろ扉に飛び付いて、必死に追います。
恐らく、表示は時速でしょう「90km」とは、トラックでは猛スピードです。
そしてトラックの側面に、追っ手がしがみついている事を犯罪者は知りますが、敢えて振り落とそうとはしません。恐らく彼女が、凶暴な拳銃を持っているとは、想像もしないでしょう。
ヒロインの同級生に言わせると、何もしていないようで、実際にやらせると満点だから厭になる!
と言う事でしょうか?実に見事な腕前で、90kmで走るトラックの前輪タイヤを、見事に撃ち抜いてパンクさせます。仮にM500だとしたら、カートリッジ内の火薬量と質にもよりますが、かなりのダメージを左腕に受けているはずです。元々銃が重い上に、利き腕では無いのですから……いい意味で、彼女も天才かも知れません。
実はこの時、初めて彼女が現場でもスカートだと知りました!
サスガの、天性の犯罪者もこの予期しない出来事には、対処できません。
右手を怪我している事もあるのでしょうが、トラックはコントロールを失います。
運がいいとしか言えませんが、トラックは道路から飛び出し、横転しながらも麦畑に飛び込んで、止まります。
普通、時速90kmで走行中のトッラクから弾き飛ばされたら、まず生きてはいないでしょうから、ヒロインの強運は相当なモノです。
しかし当然のように麦畑の中で、気を失います。
強運と言えば、この犯罪者は冷淡冷徹で天才的な頭脳を持って生まれながら、さらに身体強靱でシートベルトなど、当然のようにしていませんし、エアバックも作動しない(横転して落下では現在の機構のエアバックは、開かないはずです。アレは正面衝突対策ですから……)状況で、血は流していますがまるで平気な顔です。
そして自分の計画の最終段階で、とことん邪魔してくれる脇役(だと、彼は思っているでしょう。天才故に、自分の計算外の出演者には、余り注意を払いません。あるいは、端役程度かも……)が許せないのだと、思います。気を失って身動きしない相手の頭を、容赦なく踏み付けて押さえ付け、どこで拾ったのか彼女が落とした、恐らくM500の4インチ・リボルバーの銃口を向けます。
しかし、引き金を引いても弾は出ません。そうです、この銃の装弾数は5発。
いかに冷徹な天才犯罪者が、仮に撃った弾数を数えていたとしても、装弾数が5発だとは思わなかったのでしょう。撃てない銃は、役に立たない。実にアッサリとその銃を捨てます。
この時の重々しい音共に、ヒロインの脇に銃が落ちます。この重量感からも、やはり銃身が4インチでも、M500だろうと想像できます。そして、恐らくは怪我をしたであろう頭を、靴で踏み付けられた時から、意識を取り戻したヒロインは、また自分が相手にされずに生き延びた事を知ります。
銃が役に立たないと知ると、犯罪者は大急ぎで麦畑の中を逃げます。
まだ、動けないヒロインを安全な場所まで運ぶと、元・執行官は自分の牙である銃に、改めて全弾5発を装填します。
これで彼は、文字通り牙を持つ猟犬となって、犯罪者を追う事が出来ます。込められた銃弾カートリッジの大きさが、やはり50口径マグナム弾をイメージさせます。
逃げる犯罪者と、追う猟犬。
何か、J・D・サリンジャーの「ライ麦畑で捕まえて」という小説を、彷彿とさせるような場面です。同じプロダクションIG.の名作TVシリーズ第1期の『攻殻機動隊』の「笑い男編」でも、このサリンジャーの小説はモチーフとして利用されました。
何か、余程作り手の近未来感に、影響を与えているのかも知れません。
ついに、その剥き出しの人間性を天才的犯頭脳で、犯罪という形でしか示せなかった彼の前に、剥き出しの野生の本能で迫った猟犬が、最強の武器を持って現れました。
彼はこの時を待っていたのかも知れませんが、ヒロインが示す通りそれに関係のない他人や、社会を巻き込み多くの人を、それも残忍な方法で殺害し傷付けた罪は、大き過ぎます。例えそれが今の、完全完璧な電子管理社会システムでは、裁けない罪だとしても……。
自分自身が完全な犯罪者になる事を、今度は自分が追われる側になる事を承知の上で、自分の信念に基づいて、静かに冷静に元・執行官は凶暴な破壊力を持つ、M500の引き金を引きます。
ヒロインが利き手で無い片手で打てたのですから、彼が片手で撃てるのは当然という気がしますが、もし本当にM500の50口径マグナムだとすると、余りにも反動が少ない気がします。しかし、その発射時の閃光が一瞬、陽が落ちて暗い影でその表情見えなかった元・執行官の顔を、鮮やかに浮かび上がらせます。
この閃光が、やはりこの拳銃弾が50口径マグナムである事を、示しているように思います。
銃声を聞き、何が起こったのか知ったヒロインは、元・執行官の行動を止められ無かった事を悔やみ、何もかも闇に沈む麦畑で、怒りと後悔の涙を流します。
元・執行官は、そのまま闇の中に、溶けて消えてしまいます。
まるで畑のように規則正しく広がる、完全完璧なる社会機構を実現したとされる、『シビュラシステム』の本体であり心臓部。
良く、「脳内お花畑」と物事を気楽に考える人などを、揶揄する言葉がありますが、ここはまさにその逆の《脳髄の花畑》と言えます。しかも、この生きた脳髄達は全てが、今回の犯罪者のように現在のシステムでは犯罪認定が行えない上に、膨大な知識と生まれながら天才の資質を持った、この世界の異端者達。
この物語上の、完全管理社会を実際に維持運営しているのは、天才的ではあるのかも知れませんが、この世界的に見て極めて異常な、犯罪的的な嗜好を持ち、実行した犯罪者達の脳髄の集合体でした。
この脳髄達は、実際に犯罪を行い無いながらも、それが検知できない出来無い今回の犯罪者と同じ、免罪体質と呼ばれる、特異体質の持ち主達です。
この脳髄の集合体は、もはや自分達を一般の人類を超えた存在だと、自負しています。そして、ヒロインには今回の事件を通して、犯罪者の生存確保とあるテストケースの一環としても、自分達の正体を知らせたのです。
要システム構成員として今回の犯罪者も、その脳髄の1つに加える為に、生け捕りを指示したシビュラに、結果として失敗したヒロインは、もう用済みだと思っていたようです。
確かに評価は下がったが……と語る、シビュラの声はドミネーターの声と同じで、日高のり子氏です。
自分を新たな社会機構を構成する為の、貴重なテスト・ケースとして自分達の存在と役割を教えたまま、現在の状況を維持すると言われます。てっきり、自分はもう消されるのかとでも、思っていたのか?ヒロインの瞳は、見ているようで見ていませんでした。
しかし、自分が貴重なサンプル・データーで、これからも公安局の監察官としての活躍に期待すると言われ、その瞳ハッキリと相手の姿が映り込みます。表情の無い脳髄とその声に対して、彼女の感情がその瞳に示されているように思えます。
例え誰が作り、どのように運営管理されている社会だとしても、そこに生きる人々の喜怒哀楽は本物であり、それをまるで自分達が作り上げた虚構に踊らされているだけと、嘲笑うシビュラシステム。
ヒロインの脳裏には、その時その普通の人々の、平穏な日常と安全を守る為に、例え結果的だとしても命懸け立ち向かう、公安官達の姿が浮かび上がります。
ヒロインは、断固として言い放ちます!」
「尊くあるべき法を何より貶める(おとしめる)のは、守るに値しない法律を作り、運用する事!人間を甘く見ない事ね!!」
そして更に、こう付け加えます。
「いつか誰かが、必ずこの部屋の電源を落としにやって来る!シビュラシテム、貴方達に未来は無い!!」
嘲笑が、脳髄お花畑のあちこちから、響いて来ます。
ヒロインはもう来る事は無いだろうと、そのお花畑を睨みながら、やがてきびすを返して外に出ようとします。
その背中に、シビュラの声が追い討ちを掛けます。
「抗い(あらがい)、苦悩せよ。我々に進化を与える、糧として……」
それが、ヒロインとシビュラシステムの、物語の中で最後の会話となっています。
そして、2ヶ月後……。
ヒロインは、公安局刑事一課の唯一の監視官となり、指揮を執っています。おりしも第一話と同じ雨の夜、何と今度は女性であるばかりでなく、未成年者が監察官として配属されてきます。
結局ヒロインは、今は執行官となってしまった、かつての先輩監察官が言ったのと同じ言葉を、口にします。
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第一話のシーン。
「悪いが、刑事課の人手不足は深刻だ。フォローはするが、新米扱いは出来無い」
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ここでの会話は、第一話とほぼ同じです。
第一話のシーン。
「あいつらを人間だとは思うな、アレは獣(けもの)を狩る獣、猟犬だ。甘く見ると、痛い目に遭うぞ!」
こうして、ヒロインは執行官という人達と、初めて出会ったのです。
ただこの場面のセリフが、彼女が先輩監察官になると、少し違っています。
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「今から会う連中は、同じ人間ではあるけれど、君とはまったく違う判断基準で、犯罪に対処する。彼らの行動は時として、君の理解を超えたモノになるかも知れない。信頼する分だけ、用心もしなさい」
「舐めてかかると、大怪我をする。それが執行官、君が預かる部下達よ」
第一話の時との大きな違いは、《執行官も人間である》と強調しつつ、《通常の考えからは及びもつか無い判断基準で行動する事がある》として、これを「是」としています。
問題は監察官の対処法の方にあると言う事を、暗に明言しています。
背後に最初からの生き残り組?である、元・先輩監察官と知的でクールで、何事にも公平公正である……と言うより有り過ぎる、電子機器操作のエキスパートの女性。
このベテラン2人を従えて、ドミネーターを持つヒロインには、もはや有無を言わせぬ監察官の迫力さえ感じられます。
ここでエンドロールが入ります。
エンドロールの後に、現れる画面です。
この部屋が一体どこで、何者の部屋なのか?予想は出来ますが、明らかにはされてません。
部屋には、吸いかけのタバコと読みかけの本が、伏せて置いてあります。
この本が何なのか?あるいは「ライ麦畑でつかまえて」なのかも、ハッキリしません。タコの物語は現代に通じる、完成された統制社会の矛盾とと人間の在り方の問題を、取り上げながら見事にヒロインの成長物語(ビルディングス・ロマン)になっているところが、実にお見事です。
物語りも凄かったけど、声優さんの力量には、圧倒されっぱなしでした。
見事に、頭も育ちもいいお嬢ちゃんから、一人前以上の刑事・監察官への生長を、声でも表現して見せてくれた常守朱(つねもり・あかね)監視官(声・花澤香菜氏)。
既に御紹介をした、同じ顔で複数の人格を声だけで、男女の別無く演じ分けて見せた、榊原良子氏が演じる、公安局局長禾生壌宗(かせい・じょうしゅう、拙記事リンク済み)の、まさにベテラン声優の演技力の極地!
当初は単純に、ドミネーターの機械音声だと思われていた、日高のりこ氏の声は、最後は明らかに確固たる自意識と、冷静で明瞭な判断力を持つ、シビュラシステムを代表する声となります。
これも、最初日高氏の声と知って、「何てもったいない事を……」とおもったのは、完全に浅はかでした。むしろ、「タッチ」の南ちゃんのイメージから程遠くなった、見事な声優としての成長ぶりを、堪能させて貰いました。
男性陣は逆にノーマルに冷静で、そのクセそれぞれの裏にある、暗くて深い闇をそれぞれに感じさせる、何とも声優の力量を信じなければ、とても設定できない実に複雑な人間模様を、描いて見せました。
特にある意味で、この物語のラストで宿命の対決を演じる、天才犯罪者の槙島聖護(まきしま・しょうご、声-櫻井孝宏氏)と、元・執行官で強力で兇悪な牙として、最強の?リボルバーを手にした、狡噛慎也(こうがみ・しんや、声・関智一)の2人の声の対決は、まさに静と動。
天才と野生にふさわしい、見事なモノだったと、思います。
アニメ作品では、その表現の技術力以上に、どれだけ声の演技力が問われるかを、まさに見せ付けてくれた気がします。
このように重要で重大な、声優の存在をいつまで「効果音扱い」して、ビデオや有料ネット配信などの、2次使用以後の出演料を支払わない!で済ます、前近代的な扱いをするのか?気が知れません。
まァ、政治やお役所がどういう理解をしているのかは、知りませんが予算だけ500億?円だか賭けて、「クール・ジャパン推進計画?」など立ち上げても、またどこかの得体の知れない団体の資金源となるだけで、実質的には何の効果も無いでしょう。
残念ながら、この国では文化事業に政治やお役所が首を突っ込んだら、却ってダメになるという事が、過去何度も繰り返されています。
まずは声優さんを含む、製作現場にお金を回さなければ、どうにもならないでしょう。
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theme : PSYCHO-PASS サイコパス
genre : アニメ・コミック