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ちょっと珍しい?中村千里氏のハーレクイン・コミック女性マンガ『王女の秘密』と『王子様とワルツを』について。



毎度毎度、断る必要も無いとは思うのですが、いわゆる18歳以上・大人の女性向けマンガ誌というと「レディース・コミック」通称〈LC〉なのですが、この呼び名がアダルト系・成人女性向けマンガいわゆる、〈18禁〉系のマンガと同一視される呼び名です。

面倒な混同を避ける為に、ここでは〈LCと言う表記は使わずに、単に「女性マンガ」もしくは「一般女性向けマンガ」と表記します。
基本的には編集ターゲットというか、狙い所が明らかに女子高校生高学年から、女子大学生及び若年主婦から若年職業婦人(要はOLなのでしょうが……)という、いわゆる少女マンガの主力年齢層から一段上を狙っている、女性向けマンガという事になります。なおこの段階の女性向けは、以前は結婚前と結婚後という、ミスとミセスの区別が有りましたが、現在では表面上その表現は出来無くなりました。

この為、更に季刊・月刊等が主力の掲載誌は、その表現内容を巡って、以前混迷中だと言えます。
それで無くても、他の出版物とは一線を画すと言われながら、低調と下降売り上げが続くマンガ誌の中でも苦戦続きです。その上、これは未だにこれと言った理由が判然としませんが、少女マンガ誌ではあれほど?売れたコミックスが、作家はもちろん質・内容とも劣っているとは思えないのに、ほとんどと言うほど売れない!
結果として、短編連作のシリーズ物でありながら、「1~のように通巻番号を付けると、後から知った人は買ってくれない!」という法則が定着し、全く異なるタイトルを各コミックス毎に付けるという、実に迷惑な状況にあります。
尚これは年齢層に関係の無い、女性向けの現代心理なのか?有名な「マリア様がみてる」(今野緒雪氏著・集英社コバルト文庫版)ですら、何と30冊を越えるかという文庫シリーズの全てのタイトルが「マリア様がみてる」で、小さく副題が添えられると言う
迷惑この上の無い現実があります。

その上、まだこれでも書き下ろしの小説シリーズは良い方です。
これがマンガになると、あれほど少女マンガで勇名を馳せて、多くの作品をシリーズ化し単行本化した作家さんの作品でも、コミック化したトタンに売れない!
基本的には、まず掲載誌が売れていないので、作品自体に馴染みが無いところへ持って来て、ほとんどの場合作品がコミック化される事はありません。もちろん最初からこの程度の事は、折り込み済みですから、基本は読み切り連作なのですが、稀に連載されるケースもあります。
もっとも、前・中・後編どころか、前後編でも珍しいと言える状況です。
もちろん、作家の人気や作品の内容などに、少女マンガ誌と比べて劣る部分は無いと、断言できる場合でも、最初に1~2冊出して売れなければ、連載は続いていてもコミックスの以下続刊は無い!

呆れ返るのは、先の前後編です。
シリーズ好調で、物語も山場!と言う訳で、通常なら毎回読み切りで終わるものが、2回から3回に分けて、結果として読み切りでは無い連載として掲載されます。すると、順調に発行されていた単行本(コミックス)の読者は、思いのほか長く続きがが発刊されず、不審に思っていて「もしや知らない内に打ち切りに!?」などと心配した矢先に、次の号の新刊出て一安心。
でも読んで、アレ?エッ?何で!?何が、どうしたの?何と連載分の内容が全て飛んで、読み切りのみをまとめて続刊として発売した為に、当然のように内容が理解不能……。

実際に、これを落丁と勘違いした購入者からの多量の返品に驚いた編集部が、慌てて飛ばした分をまとめて(これらの例には連載ではなくても、イジメや不法滞在せざるを得ない外国人問題などの、微妙な問題も含まれます)1冊にして、何と何巻と何巻の間を結ぶ「~.5巻」として、発売したりします。例外中の、例外ですが。
それにして、パソコンソフトのバージョン・アップじゃあるまいし、~.5巻て何でしょう?しかもそれが実は、既に発売されている他の通常巻の、2倍どころか3倍の厚みがある!何て事も、実際に存在します。
それでもまだ、発売されれば良いのですが……。

その点、今回御紹介する作品の原作はかの有名な、「ハーレクインロマンス」シリーズ。
まさにこの手の王道中の王道と言っても、過言ではない作品群です。原作ですら、予め決められた枚数に、決められた山場を設けるなどの、文字通り定番中の定番として、知られています。
ただこれが日本の女性マンガ家の手に掛かると、チャンとそれぞれの持ち味が出るところが、さすがマンガの国!ニッポン!!

ただマァ、当然と言えば当然ですが、その作家特有の持ち味とか意外性などが、ほとんど感じられなくなるのは、むしろ当然だと思います。
そして今回話題する作家、中村地里氏には、その中でも現在はほとんどその創作発表の場を、そちらに移しています。この為個人的には、大いに不満残る部分もあるのですが、その中でここ2005年(初版刊行)と2013年刊行のコミックスで、ある種丁度真反対の面白い作品がありました。



中村地里

中村 地里(なかむら ちさと)は、北海道釧路市出身の漫画家。
女性。夫は、同じく漫画家のねぐら☆なお。
デビュー作は『ウィンディ・コネクション』。
代表作は角川書店の少女漫画雑誌『ASUKAファンタジーDX』誌上で連載していた田中芳樹原作の『アルスラーン戦記』。自他ともに認める田中小説フリークであり、「アルスラーンを好きな方に描いてもらいたい」という田中芳樹の希望により選ばれた。
現在はロマンス小説の漫画化を中心に活動している。

〈後略〉


まァ、誰が見ても代表作は、田中芳樹氏の小説を原作とした『アルスラーン戦記』全13巻でしょう。
とにかく、いわゆる原作シリーズ第1部のマンガ化を、完全に成し遂げたという意味は、大きいと思います。この時点での原作好きから見ても、むしろ原作から極力離れずに、うまくまとめているという点には、大いに好感が持てます。

さて現在は、まさに女性マンガの王道中の王道と言える、ハーレクインロマンスのマンガ家として、大いに活躍されています。
さて、その中の最近作と以前の作品で見付けた、面白い対比を見付け作品とは?


王女の秘密 (ハーレクインコミックス)王女の秘密 (ハーレクインコミックス)
(2013/12/02)
ケイト ハーディ

商品詳細を見る

VS

王子様とワルツを (ハーレクインコミックス)王子様とワルツを (ハーレクインコミックス)
(2012/08/01)
中村 地里、ニコル ・バーナム 他

商品詳細を見る


ハーレクインコミック
の著者一覧サイトとリンク済み


作品内容はもちろん、いわゆる
「お決まりの」定番ですが……。




王子様とワルツを(ハーレクインコミックス)』

〈内容紹介(コミックス裏表紙より)〉

内戦真っ只中にある、ラソボ国。
そこにあるハファリ難民キャンプでボランティアとして働くジェニファーは、徐々に増えていく避難民の数に施設の限界と物資不足を感じていた。 そんなジェニファー達のキャンプに、隣国サンリミニの皇太子アントニーが視察に訪れる!!悲惨な難民キャンプの状態に心を痛めた彼は、すぐに援助の手を差し伸べてくれた。

王族だというのに、それを鼻にかけず私達の話に耳を傾けてくれる優しい人---。
ジェニファーは、身分違いと知りつつもアントニーに惹かれてしまう気持ちを止められなくて・・・。



VS



王女の秘密(ハーレクインコミックス)』

〈内容紹介(コミックス裏表紙より)〉

コーンウォールの、のどかな村で獣医として働くメリンダは、診療所の医師ドラガンと周囲も公認の恋人同士。
ある日、待ちに待ったプロポーズをされ、天にも昇る気持ちで承諾。だが、結婚するからには、重大な秘密を打ち明けなければならない。

そう、私が地中海の島国コンタリーニの王女であることを。
思い悩む彼女のもとに、皇太子である兄の急死を知らせる連絡が入り、ほぼ強制的に帰国させられてしまう。王位の行方は…そして、愛するドラガンとの結婚は、どうなってしまうの!?


「王子様とワルツを」が2005年コミックス出版で、「王女の秘密」は2013年コミックス出版です。

そのせいかどうかは解りませんが、前者は徹底的な「シンデレラ・ストーリー」しかし、現代のシンデレラはただ待つだけの可憐で美しく、そして不遇の女性ではありません。
国境なき医師団リンク済み〉に参加する医師の両親にもとにアメリカ人として生まれ、学校に通いながらも国際紛争地域のボランティア活動に参加し、現在は自身が代表として、ボランティア団体の実働部隊を指揮しています。

両親と共に、幼い頃から各国を転々とした影響で、5~6カ国の言語に堪能で(「国境なき医師団」の公用語はフランス語です)会話だけならその倍は使えるという、才媛です。
さらに、率先して難民キャンプ設営の為に、トイレ用の穴を掘る(これ大変です。日本でも大きな災害時に、非難してきた人々の為のトイレをどうするかが、緊急且つ必須の課題として上げられています。ちなみに、海外の紛争地域では避難民のキャンプは、主に野外に設置されますが、幾百幾千という単位の人々の排泄処理は、取り敢えず地中投棄しか有りませんが、当然それは五十メートル・クラスの競泳プールが、幾つもできる規模となります。人力となると、それだけで大変な重労働ですし、土地によっては岩盤が固くて重機が必要となりますが、それをどうやって持ち込むか?衛生上の問題もあり、また宗教上の問題から絶対に男女別とか、考えている間にも必要とする人は増える訳で、自然災害に対してもですが取り敢えず、人間同士の問題で難民が発生するような事態そのものを、防ぐのが最良且つ最善策で最安価です)事も厭わない女性です。

つまり知力も体力も、申し分無い訳です。
ただ両親と同じく、医師になろうとしたのだけど、理数系がまるでダメで教師から「医師は諦めろ」と言われた時には、ショックで死にそうになったそうです。アメリカなどの学校では、もちろん生徒を見て判断するのですが、場合によっては「君にはムリだ」と言うような事も、日本の進路指導に当たる場面で場合によってはキッパリと、伝えるようです。
この辺は、他のアメリカの青春映画などでも描かれているので、そうなのでしょう。

そして当然、美人です!
セオリーとしては、現場作業中は汚れにまみれて、髪も肌も酷い状態ですが王室主催のレセプション会場で、メイクやファッションの専門家に整えて貰うと、見違えるようなレディになる!!訳ですが、マンガの性質上。どうしても、最初の出会いからそれなりに美人です。「みっともない格好~」と言うセリフが、むしろコジツケに聞こえるのは、仕方の無い事でしょう。

と言う訳でアメリカ人ですから、血統としての地位は無く、両親は医師ですがボランティアで海外を飛び回っているようでは、資産家でもありません。
この為、皇太子の父王は早々に息子の妃候補から、除外しますが当然の展開として、もはや皇太子の心は彼女の物です。という事から、スッタモンダの挙げ句。
皇太子が王位継承権を弟に譲っても、彼女と一緒になりたいという、クライ・マックスを迎えます。

さて、ここから問題です。
王位を捨ててまで、一緒になりたいという皇太子の求愛を、ヒロインは穏やかに断ると、静かに語り掛けます。
「(前略)~貴方に課せられたものは、もっと大事で重大な事だわ。それは国を平和に、治めること。決して難民など出さぬよう、侵略せず侵略を受けず、平和を守り国を導き治めていくことよ」
さらに、続きます。この間、他の者は国王も口を挟めません。
「~(中略)貴方の為すべき事は、この国にあるのよ。だから・・・。さようなら」
愛しているが故に、その相手が果たすべき責任を、果たせなくさせる訳には行かない。
敢えて一度背を向けると、一度も振り返らずに部屋を出ようとする彼女を、初めて国王が名前で呼び止めます。

「何でしょう、もう御用はないはずですが」
そう言って振り返ろうとはしない彼女を、国王はもう一度こちらへ戻るように、呼び掛けます。
その言葉に、仕方なく振り返ったヒロインの目からは、涙があふれていました。その顔を、見た国王の言葉です。
「美しい涙、美しい姿、そしてそれ以上に美しい、高潔なる魂。無償の愛」
初めてヒロインと、正面から向き合った国王は、更に続けます。
「これ以上の皇太子妃は、おそらく世界中どこを探しても、見付からないだろう」

この場面はまさしく、マンガ家中村千里氏の、独壇場とも言える場面です。
既にこの作品には「イギリス王室の二の舞」という、ダイアナ妃問題に触れています。単なるシンデレラ物語ではなく、一般人女性が未来の国王と結婚する事の、様々な問題を踏まえた上で、それでも彼女なら勤まる。そして自分は、彼女とでなくてはこの重責を、果たす事が出来ない。
何よりも大切なのは、互いの想いと彼女の女性として以上の、後の王妃としての資質と覚悟。これを国王は、じぶんとのことばとして、表現したのでしょう。

「美しい涙、美しい姿、そしてそれ以上に美しい、高潔なる魂。無償の愛」
この言葉からは様々な、要素が汲み取れますが、敢えて抽象的に短くも、意味深い言葉で、表現されていると思います。同時にそれを体現する、マンガ家の描くヒロインの姿。こればかりは、活字だけの小説では、どうにもならないでしょう。まさにマンガだから、表現でき得る世界です。

この〈ハーレクインロマンス〉シリーズの常として、この後のハッピーエンドと結婚式や後日談には、ほとんど紙面がありません。

常に、この段階で「メデタシメデタシ!」です。


さて次は、という前に実際にあった2010年06月19日に行われた、現スウェーデン皇太子ビクトリア王女(スウェーデンは男女を問わず現国王夫妻の第一子が王位継承権第1位となります。弟皇子がいらっしゃいますが、現在のところビクトリア王女が、次期女性国王です。)の結婚式で、公式車両に選ばれたVOLVOの宣伝映像です。








スウェーデン王女結婚04

スウェーデン王女結婚03

スウェーデン王女結婚0A

〈2012年02月23日、ヴィクトリア
王太子との間にエステル王女が誕生・王位継承者〉


そして御相手は、何と一般人も一般人スポーツ・ジムのトレーナーで、他国語はおろか自国語も方言が酷く「カエルの鳴き声のようだ」と、酷評されたそうです。
また当時の月収は、手取りで11万円だったとか(スウェーデンは所得の税率は高く、逆に物価が安いので、これでも平均レベルだそうです)。さらに、ビクトリア王女が父親のグスタフ国王にダニエル氏を紹介すると、34年前に民間人でミュンヘンオリンピックのコパニオンだった、現在のシルビア王妃に一目惚れして結婚したのを棚に上げ、国王から返ってきた言葉は「民間人と結婚するのか!」と言う激しい言葉。
そこで席を立って以来、数ヶ月に及ぶ無言の反対表明。対する王太子も、こちらはハンガー・ストライキで対抗。

見かねたというか、御自分も民間人だったシルビア王妃が国王を説得(一節には糾弾?とも、言われているようです)。
遂に国王も交際を認め、この結果王室関係者はダニエル氏を、次期女王の伴侶として恥ずかしくない紳士に仕立てる、プロジェクトを展開したそうです。仕立屋と美容師が付いてイメージチェンジ、家庭教師を雇っての「3ヶ国語と歴史、マナーの学習」、「公務の仕上げ」などなどを、約6年に渡って叩き込み、遂に出会いから8年目に晴れの日を迎えたという事です。

つまり何が申し上げたいかというと、現在の欧州王室事情では、当然国毎に差違はあるものの、次期女王と平民男性とのいわゆる〈逆シンデレラ・ストーリー〉は、完全に有り!だという前提で、次の作品に行きたいと思います。

王女の秘密』は既に御紹介の通り、『王子様とワルツを』とまさに真逆の、物語です。
結局は、ロイヤル・ウエディングなお話になるのですが、逆もまた真なり?を地で行くように、表紙まで実によく似ています。しかし、こちらは極めて現代的な(2013年のコミックス化ですから当然と言えば、当然ですが……)王位継承権と、その当事者の王女が田舎町の獣医としての、平凡な生活を実際に送っていて、王室や王宮には圧迫感すら感じるほど、毛嫌いしていると言うところが決定的に異なります。

この物語は、そもそもの王位継承者であったヒロインの兄が、日頃の不行状が祟って呆気なく事故死してしまったところから、彼女の日常を変えてしまいます。
王女でありながら、平凡な?庶民生活をこよなく愛し、獣医の資格を取ると王室や王宮どころか母国からも離れる、ヒロインの存在自体に時代の変化を感じます。そして、突然の出会いと、こちらは人間の医者というある意味で、理想的な男性と恋に落ちます。
そして、これも現代的に彼は彼女にプロポーズし、それを喜んで受けたヒロインは当然のように、彼と半同棲のような生活を送ります。

問題は、自分の両親へ彼が挨拶に行きたいと、譲らない事です。
彼の両親は、クロアチアの内戦で彼の兄と共に亡くなり、彼は単身イギリスに亡命すると、苦学の末医師免許を得る事に成功しのだそうです。これだけで、ハーレクインの相手男性としては経歴も、現在の生活や収入も、文句の無い理想的な存在です。
ハーレクインの世界では、原則的に日常生活において余裕のある、そして過去になにがしかの傷を持つ男性が、御相手の基本です。まさにその基本に忠実な、実に理想的な相手だと言えます。
こうして、故郷に似た現在の田舎町に医師として定住すると決め、そこでヒロインと出会った訳です。しかも、呆気ないほど簡単に相思相愛となり、結婚まで決めてしまいます。

問題は彼女が、頑として自分の両親には、会わせないという事くらいです。
その理由は、彼女が彼と結婚する前に、彼女の母国に彼を連れて帰れば、彼が自分が王女であるという事を、必然的に知ってしまう。国王と王妃である、両親の反対は目に見えていますが、ヒロインは最初からそれを聞く気はありません。
問題は、生真面目な婚約者が「王女様とは住む世界が違う、結婚できない!」と、言い出す事です。しかし、自分は王女としてではなく、1人の女性として彼と一緒になりたいと思う彼女は、とにかく先ずは彼に自分の素性を知らせるべきだと決断します。結婚するまで黙っている事は、彼に対しての一種の裏切りにもなるでしょう(更に宗教的に、神の前での誓う以上隠し事は無し!と言うのも、敢えて言葉には表現されていませんが、ハーレクインの原則の1つです。これを隠したり、誤魔化したりしたまま結婚する場合は、いわゆる「偽りの花嫁」タイプの物語となります)物語のテーマがそこに無い以上、いわゆる「隠し事」や「誤魔化し」は「虚偽」となるので、何としてでも結婚式の前に片付けねばなら無い、問題となります。

ところ兄の不慮の死によって、ヒロインの状況は一変します。
これも現代的ですが、彼女の王室では王位の継承権に男女差は無く、生まれた順が即ち王位継承権の順位となります。彼女には美しく、頭脳明晰で姉の性格と考えに理解のある、実に良くできた妹がいます。しかし妹の継承権は、自分の次です。
慌ただしく、兄の葬儀の為に故郷に一時帰るというヒロインが、焦燥しているのを見た婚約者は、それを急に身近な肉親を失ったショックだと気遣います。しかし、実際にはヒロインの目眩は、兄の死を知らせた母の電話にあったのです。

「(前略)~今までは、あなたの気まぐれも許してきたけど、こうなったからにはあなたは次期王位継権1位なのよ」
つまり、今回(兄皇太子の葬儀に)母国へ帰って来たら、2度とそこへは帰れない!と、暗に宣告されていました。しかも素行が悪く、国民からも顰蹙(ヒンシュク)を買っていた兄皇太子に比べて、王室から離れたとはいえ勉学に励み。さらには、美しくもあり肩書きもありながら、質素に他国の田舎町で庶民として、独りで獣医を続ける長女である妹に、国民の密かな人気は集まっていたというのです。
だから現王妃である母親にしてみれば、むしろこの機会にヒロインを次期女王として、華々しくデビューさせるのが何よりと言う事になります。マァ、些事ではありますが幾ら王位継承権が第2位とはいえ、ヨーロッパの小国の王女が他国で、庶民として独り暮らしができるものか?という、疑問は当然あります。
またハーレクイン・シリーズでは、基本的に近代の民主的な国の王室は、全て男女の別なく生まれた順位での、王位継承権という不文律があるようです。

と言う訳で、ここからはどうやってヒロインが婚約者の元に戻るのか?そして、当然彼女が次期女王という事実を知った彼が、どう判断し行動するのかが問題となります。
ここで都合の良い事が、2つ存在します。1つは、姉以上に美と才気に満ちあふれ、しかも姉思いでもあり、姉とは逆に宮廷社交界の華と呼ばれるほどの、妹王女の存在があります。彼女は幼い頃から、姉が華美華麗を好まず、質素でつましい生活を望んでいた事を、知っています。
逆に彼女は、兄弟の3番目という事もあり、自由奔放でありながらも礼儀礼節を重んじる、伝統的な宮廷社交術にも長けていました。本人とヒロイン曰く、「よほど自分(妹)の方が、女王に向いていると思う」彼女の存在無くして、ヒロインの母国脱出は叶わず。
彼との再会と、婚約解消話しから復縁に至る過程は、有り得無かったでしょう。

そして、もう一つ都合が良かった事は、王女という意識の無かったヒロインが、婚約した相手と当然のように寝起きし、その結果が妊娠という形で現れた事です
これはいささか、本題とはズレるかも知れませんが、いわゆるキリスト教圏にあるヨーロッパの王室は、それぞれお国柄の違いもあります。その点、微妙ですが形式的には正式な結婚の前に生まれた子供に、継承権は与えられないのが原則です。
これは、いわゆる近代民主国家の、庶民の相続権とは明らかに、異なります。そこまでは行きませんが、現ノルウェーの皇太子妃は子持ちの未婚の母(いわゆるシングルマザー)で、現皇太子と結婚しました。

この義理の息子は、当然貴族の扱いを受けますが、もちろん王位継承権はありません。
ついでに加えると、この現皇太子妃は長男の父親(彼女の妊娠を知るとアッサリと捨て去ったそうです)との関係から、〈麻薬〉に関係し、使用も認めています。当然の事ながら、国会をも巻き込む大騒動となりました。
皇太子自身はもちろん本人の懸命な姿(子供を育てながら飲食店などで働くかたわら、猛勉強をしてノルウェー最高学府のオスロ大学へ入学した)などと、特に皇太子の母親である現王妃が後に義理の孫になる、彼女の息子を可愛がる様子などが国民に知られると。
それまで下降一直線だった、王室への支持率が一気に80%以上にアップし、晴れて2001年にオスロ大聖堂で結婚式を挙げました。押し寄せた数万のノルウェー国民の前で、花嫁と肩を並べてバルコニーに立った王太子の腕にはしっかりと、義理の息子が抱き抱えられて、その姿また多くの国民の支持を集めたそうです。
なお、二人の間には2004年に長女が誕生し、彼女がノルウェー初の次期女王となる予定です。



〈ノルウェー皇太子の結婚式の映像〉

ノルウェー大太子結婚02

〈連れ子と3人で国民の祝福に
応えるノルウェー皇太子夫妻〉


尚、ソニア現王妃もノルウェー初の、民間出身として有名です。
そんな事もあり、別に女太子が庶民と結婚する事にそのものは、現代では不可能とは言えません。ですのでこの物語の根底には、まず〈次期王位継承者という立場と宮廷生活に馴染めない王女〉という前提が、根本的な問題として、最初から存在します。
そして王女ではなく、獣医の女性と結婚したいという、男性がいるという図式です。逆玉シンデレラ・ストーリーとも受け取れますが、実際にはどうやって《王位継承権から逃れるか?》という、珍しい構図です。

この物語の根底には、ヒロインが王位どころか宮廷生活も望まないという特異性と、個人の都合は優先できるが公的な責任には、簡単に背を向けられない。
実に根は、生真面目な気質というものがある。という点から、話しがややこしくなるように、仕組まれています。ついでに言えば、相手の男性も負けず劣らず、生真面目な上にかなり自意識過剰で、それこそ「逆玉シンデレラ」などと呼ばれる位なら、別れた方がマシだ!と、断言するくらいの堅物です。

という事で、最終局面では儀礼と慣習に拘る現王妃の母親と、王女を一般人の女性として共に、庶民として生きて行きたいという男性との、平行線な対立があります。
体が弱いと言う父国王も、この場面にようやく登場しますが、国王はかねてから長女の性格と考えを理解していたようで、王妃のように強く反対はしません。
ただし、世の父親ならば当然という姿勢で、娘と結婚すると断言する男性を、辛辣に値踏みします。

結局この問題は、王位継承者としてはより見合う次女がいる事と、決定的だったのは既に長女が妊娠していた事が発覚し、急転直下のように解決します。
例え王位継承権は無くても、母王妃にとっては初孫です。その事を知った母親は、それまでの態度一変し、完全な祖母バカブリを発揮し、次女に直ちにドレスと結婚式の準備を指示します。もちろん、ヒロインの王位継承権の放棄と、妹の次期王位継承権を認めるのは、当然とばかりにルンルン気分のようです。

こうなっては、そもそも何が問題だったのか?と言いたくなる結末ですが、これも現代ならではと言う事で、王冠やドレスよりも獣医としての制服や、治療用の包帯などの方が好きな王女と、市井の一般市民であり人の医者である事に誇りを持つ、立派な男性との恋物語として、フィナーレを迎えます。
ただ物語としてのドラマチック性は、オーソドックスではあっても一般庶民の女性が、王子様と恋に落ちる前作の方が、波乱に満ちて盛り上がったように思います。特に、クライマックスは……。

どちらにしても、勝手な私見ですが同じ人が、こういう正反対の立場にある、物語をマンガにする事など、滅多に無いのでなかなか面白い組み合わせだと思います。



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Author:HINAKA
『あんのんブログPart2・HINAKAの戯れ言』です。
本来は、『あんのんブログ・HINAKAの雑記』としてSo-netブログであったものが、So-netブログから追い出されて、ここで新たに構築するモノです。

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