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森薫著『乙嫁語り』目当ての「ハルタ・Vol12」2014年12月号ですが1ヶ月遅れです。



丸1ヶ月遅れて、何を言うんだ!と、いう気もしますが取るものも取り敢えず。
乙嫁語り第4期姉妹妻編完結!の、ようです。


ハルタ 2014-DECEMBER volume 20 (ビームコミックス)ハルタ 2014-DECEMBER volume 20 (ビームコミックス)
(2014/12/15)
福島 聡、森 薫 他

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しかし、まいりました。
大方の予想通りの?結果に終わったのですが、次の町に旅立つスミス氏同様、「悪い事でも、間違ってもいない。むしろ、正論」であるが故に、悩むのはスミス氏だけではないでしょう。もちろん当事者達の幸せ!これが、一番重要です!
と分かっていながら、何か腑に落ちないのは、実は一夫一婦制を金科玉条のモノとした、西欧の近代的思想信条に、こちらも染まっているのかも、知れません。ただ重要な事は、近代法治国家に於いて法の前での平等を、絶対のモノとする以上、一夫一婦制は女性もしくは婦人の人間性を改めて見直し、いわゆる『男女平等男女同権』の大きな柱と、位置付けられています。

いわゆる一夫多妻制は、「女性蔑視の典型」として、いち早く社会制度としては否定されました。
しかし、それまでの社会的な慣習や、圧倒的な女性の社会経済的地位や、能力を得る機会の限界。何よりもそれを差別と認めないというか、認識しない男性優位の社会習慣や慣習が、長らく西欧でも男女格差及び社会経済的な階級格差による、低年齢差別による児童労働(虐待)問題は、教育の問題と結び付いています。
これら問題はアメリカを含めた、現代欧米社会にまで連綿と続く、基本的な社会問題の1つです。

この為も有ると同時に、作者が女性である以上は、という前提を否定は出来ません。
しかし一夫多妻制を、習慣的に認める民族文化の社会に対して、西欧的な一夫一婦制を絶対的な価値観として、持ち込む事は時代背景もあり、それぞれの土地の自然環境や、社会習慣や慣習の違う点も大きいと思います。ですから、博物学者(現代では分割されていますが、文化人類学・生物環境学〈地学や地理学も含みます〉・考古学等々)を総じて自ら、異境の地に踏み入り様々な採集・研究を行った、19世紀初頭から広まった科学的調査に基づく学問です。恐らく、スミス氏も言うなればその一員だと思われます。
進化論で有名な、C・ダーウィン博士もそのキッカケは、有名な『ビーグル号航海記』を記した、探検に於ける採集と調査。その分析と研究から、この画期的な(後に数多くの誤認や誤解、あるいは不名誉な拡大解釈などを指摘され、現在では全体としては評価されるモノの、その内容に付いては懐疑的な事が多く詳細は否定されているようです)『種の起源』を記したと、されています。

ですので、この物語の「姉妹妻」という、伝統的なまァ日本で言うところの、「義兄弟(ぎきょうだい)の契り」に、近いところがあるのかもしれません。
とにかく伝統に基づいた、神聖な儀式により新たに「姉妹」になった女性同士の物語として、まずはその当事者の想いと行動が、どう描かれているか?という事で、これまでの『乙嫁物語り』とはやや異なる、展開であった事が大きかったと思います。

男性読者にとって、今回の視点はほぼスミス氏と、同じだと思います。ただだからと言って、この状態の彼女達に何が出来るのか?たぶん感情抜きなら、「助けられる者が、困っている者を助ける事に、何の問題があるのか?」という正論の前には、何も反論できないと思います。そして物語では、「それは当事者である、女性の気持ち次第」と言う描き方をしています。




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シーリン表紙

〈ハルタ版第16話『二人の庭』見開き表紙〉


これまでの乙嫁が基本的に、「結婚する女の子」の物語で有ったのに対し、今回は「結婚して既に赤子も設けている女性」という点が全く異なります。
それでは「乙嫁」では無いのではないか?関しては、辞書的にも「若々しく可愛らしい嫁」という意味を含むらしいので、子供まで生まれながら、生まれて今まで完全な箱入り娘で、子供を産んでも母親の自覚を持てず。それでも構わないと、甘やかしてくれる、裕福で優しい旦那様の庇護の下、傍目には羨ましいだけの自由な生活?だけど外には出ないので、遊び友達もいない。
そんな乙嫁が初めて、姉とも慕える他の女性と知り合い、「姉妹妻」という伝統と型式に乗っ取った契約を交わし、本当の姉妹として仲良くやっていこうとします。ところがその矢先に、相手の女性に夫の突然死が訪れるという、今までの彼女が経験した事も無いアクシデントが発生し、茫然自失の胸中を味わいます。
ともかく、女性には何の権利も夫が残したもの以外は、何の財産も無いのですから、蓄えが尽きた時点で路頭に迷います。この事態に、初めて自分から「何とかしたい何とかしよう!」という自覚と意識が、乙嫁にも芽生えます。

そうは言っても、結局は自分に甘い人の好い夫に、すがるしかない訳ですが‥‥‥。
ここで重要な点を、再度確認する必要があるかも知れません。この作品の作者は予め「宗教に関する事は話題にしない!」と断言し、前置きしています。時々この作品の「イスラム的表現について云々」と言う、ネット上の記述を見かけますが、この作品を最初から読んでいる方にはお分かりのように、この物語には《イスラムに関わる言葉は出て来ません!》それどころか、宗教絡みの表現もありません。

ですが、《土地や住む人々の慣習や習慣としての信仰の表現》は、物語の性質上頻繁に登場します。
かつて世界史上最大の版図を得た、モンゴル帝国のチンギス・ハーンはイスラムの知識人を優遇し、それにより広大なユーラシア大陸のほぼ半分以上を、一時的にせよ支配する事に成功しました。この時、チンギス・ハーン自身は宗教には興味を示さず、仏教徒はもちろんキリスト教徒もイスラム教徒に対しても、自らが至上の盟主である事さえ認めれば、事実上信仰に関しては無関心だったようです。
例えばその新たな占領地で、モスク(イスラム教会)に大勢のイスラム教徒が集結していると、騎馬でその場に乗り込みその聖典の入った箱を、槍の柄で乱暴に叩き落とし馬の足で踏み躙ったと、言われています。しかし、だからといってその場に集まった人々に何をするでも無く、無言の内に自分の権力を誇示したとされています。
結局、当時のモンゴル帝国にとっては、自分達が持って生まれて以来信仰するモノはあっても、それを組織化し教義化した宗教というモノは、結局存在しなかったようです。これは後に帝国崩壊後、フビライ・ハーンによって中国化された「元(げん)」という中華帝国においても、同様であったようです。

この物語もまた、それに似た対応をとっています。
明らかに、イスラム的な行為や習慣であっても、それが宗教的なモノであるか否かではなく、伝統的な地域別民族別の慣習として、描かれています。今回のテーマであった「姉妹妻」もそのようなものだろうと、個人的には解釈しています。
イスラムに、そういう習慣や慣習があったかどうかではなく、その伝統中で培われた信仰の一端に、互いに異なる夫を持つ女性同士が、神聖な儀式に基づいて「姉妹の契りを交わす
特に東アジアに於いては、有名な「三国志演義」に描かれる「桃園の誓い」のように、男同士の血縁も縁戚も無い「義兄弟の契り」は、珍しくありません。同時に、女性同士による同様の関係があった事は、事実だと思います。ただ、この物語に描かれるような、特筆すべき「姉妹妻」と言う制度があったかどうかは、わかりません。

あるいは、作者の創作かも知れませんが、この物語自体がそもそも時代や舞台を予め曖昧にした、半ファンタジー思考の強い物語であるので、その時代的歴史的な背景や文化宗教的な裏付けを、強く求める事は意味が無いと思います。
むしろ、作者が描いているのは「作者自身も含めた自分達には理解できても(感情的には)納得できない」社会制度や習慣の中で、生きる人々がいるという事実。その心情を推察する事は、本来出来無いのかも知れません。ただ、既に1人の妻であり赤子の母親であるにも関わらず、その心や行動は少女であり続ける女性が、初めての心許せる相手を得て、成長する過程を描く事があるいはそのような環境での、若い女性の在り方の物語となるのかも知れません。
この物語を描くに当たり、作者は敢えてそれまでとは違う、細い線が細かく描けるペン先に敢えて変えて、なれるまでに相当苦労したと、作者のページで述べています。

確かに一言で言えば、『オリエンタルな百合の物語』に過ぎないのかも知れませんが、慣習として男性の擁護が無い女性の生活が苦しい土地柄で、親しい友が窮地に立たされたらどうしたら良いか?
例によって、描かれ方と背景が異色ですが、内容的にはよくあるパターンの物語だと、言う事もできます。しかし、それを絵の力でここまで盛り上げるのが、この作者森薫氏の素晴らしいところだと思います。


シーリン033

〈「乙嫁」第4期完結です〉





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