鈴木央(すずき・なかば)著『ブリザード・アクセル』について、以前の記事『銀盤カレイドスコープ』に触発されて、今のところ少年マンガ唯一の?本格フィギュア・スケート・マンガ!
単純な話しですが、少し前に『銀盤カレイドスコープ』といういわゆるライトノベルの原作と、その第1巻を元に作られて放映された、TVアニメ・シリーズに関しての当時の記事を、再掲載しました。
その時に、同時にフィギュア・スケートのマンガ作品として、特に少年マンガでは唯一無二?と言える作品を思い出しました。
それが今や『7つの大罪』すっかりメジャー作家になった、鈴木央(なかば)氏の『ブリザード・アクセル』という作品です。
少年マンガであるが故に、最初から当然のように迫力のあるジャンプや、高速回転のスピンが描かれていますが、驚くほど丁寧に現在の採点方法に拘り(先の『銀盤~』では、まだ6点満点の採点方式でした)その点数や加点・減点方法を、テンポ良くしかも繰り返し説明しています。
その拘りは、物語の中でジャンプの踏切(これがフィギュア・スケートのジャンプでは大きいのです!)方法や、そこに至るまでのスケーテイング方法などを、詳しく解説しています。それも実に自然に、物語の流れとしてキチンと描かれている部分は、凄いと思います。
物語の究極の目標であり、フィナーレはバンクーバー・オリンピック(実際には、2010年開催されています。作品は2005~2007年に連載)でしたが、ハッキリってそれはどうでも良い事で、物語の確信はさながら少女マンガのように(槇村さとる氏の名作『愛のアランフェス』)を筆頭に、少女マンガには既に幾つかのフィギュア・スケート作品の良作が描かれています。
ちなみに鈴木央氏の少女マンガ好きはつとに有名で、自他共に認めるモノでこの『ブリザード~』でももちろん、他の作品でも多くの少年マンガが回避する恋愛要素が、お飾りではなくむしろ核心として描かれています。
上記01巻~11巻で完結していますが、作者は特にコミックスで「技の判定基準は2005-2006年のもので、今後どうなるかは分かりません」と明言しています。
そして明記はしていませんが、実際に事実上(物理的に?)不可能な技とか、ジャンプのコンビネーション(種類の異なるジャンプの連続が主ですが、軸足を変えずに他の技へ移行する事も言います)でも、人間の体の構造上絶対に無理!みたいなものは、描いていないようです。キチンと専門家のアドバイスも受けて、致命的な間違いでコミックスで訂正できなかった事は、後書きでお詫びしています。
「この試合は公式戦ではないので、特別ルールと言う事でお許し下さい」とまで述べる、徹底ぶりです。
そして第04巻の巻末に、非常に詳しい得点リストが収録されています。その最後に、編集の註釈かも知れませんが、ワザワザ「~これは2005-2006年のシーズンのものなので変更される場合があります。また、この作品はフィクションなので、作中が2005年だという訳ではありません」とまで、記しています。
更に面白いのは、全11巻の内次に上げる第04巻以降、タイトルの「ブリザード・アクセル」なるモノはそっちのけで、物語は主人公とヒロインがまさにこの第04巻の表紙のように、ペア・スケーティングを通じて心通わし、互いに成長する物語です。
この辺も、作者の少女マンガ好きが、色濃く反映されているのかも知れません。先にも挙げた、槇村さとる氏の名作『愛のアランフェス』でも描かれた、男女のペア・スケーターは《恋愛関係になったら失敗する!》と言う難問に、中学生からぶつかります。
それらを乗り越えて、2人がペア・スケートしても中学生としても、想い会う恋人同士となる事の、悩みや苦しみから楽しく喜び合えるように、成長する姿が結果的には一番長く描かれる物語です。
と言う訳で、実際ここまで真面目でシリアスな、フィギュア・スケートを通じた文字通り純粋に、少年少女の成長物語だと、気付かずに最初の方で見切った方も、多いのではないかと思います。
ですが今さら見直すと、この作者にはこの展開に似た傾向の作品が多いような気がします。最初は体力だけとかの、ハチャメチャな主人公の少年が、スポーツ競技などの何かと出会いそれを通じて、「人」特に、過去の問題で不真面目になった指導者や、そのハチャメチャブリに呆れてバカにする少女。
更には彼の態度に、その道に打ち込む者として、または己の才能を自覚する者として、呆れて腹を立てる先輩や同輩・後輩達。そんな彼らの厳しい洗礼や、呆れて相手にして貰えない態度をモノともせずに、自分の前に現れた壁を何とか乗り越えようとする主人公。
そんな彼に、いつしか好感や好意を抱く仲間達。そして‥‥‥と言うのが、多いような気がします。その中でモコの作品は、その典型と言える気がします。
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と言う訳(どういう訳?)で、少し詳しく『ブリザード・アクセル』という作品を見ていますが、その前にタイトルとなっているアクセル・ジャンプを初めとして、フィギュア・スケートの花形と言えるジャンプの種類を上げて置きます。
●トゥループ
●サルコウ
●ループ
●フィリップ
●ルッツ
●アクセル
以上6種類で、全て踏切の仕方の違いから名前が付いています。
このうち有名で最高難度でもある、アクセルですが、この飛び方だけが特殊でこれらのジャンプの内で唯一、前向きに飛ぶ飛び方です。原則的にフィギュア・スケートでは、バックの方がスピードが出て、踏み切りもし易いのだそうです。同時に着氷も、バックになりますので成功すれば、必ず1回転しています。
アクセル・ジャンプも同じで、加速は通常後ろ向きに(当初この作品の主人公は、前にしか滑れませんでした)しますが、飛ぶ前に(瞬間にブレーキを掛けるようにして、前を向きより高く加速して飛び出す技術を、主人公がマスターする様子が、作品には描かれています)前を向いて、後ろ向きに着氷します。
この為他のジャンプと異なり、アクセルだけは1回転半しなければ、回転した事になりません。そのせいで、前向きに降りると失敗ジャンプとなり、1回転は1回転+半回転の1回転半となります。ちなみに最初主人公は、体力と動体視力も含めた運動神経は抜群でしたが、前向きの滑り方しか知りませんでした。その為、素直に前向きから加速しそのまま踏み切り、3回転半のつもりで4回転半ジャンプを、着氷に失敗しながらも見よう見マネだけでやってしまいます。
4回転半を、公式の試合で成功した例は、2015年現在も存在しません。
しかし男子では既に、アクセル以外の5種のジャンプを全て4回転で成功させている、選手もいるそうです。そして4回転半(クワドラブル・アクセル)も練習等では、この作品が描かれた2005年当時で、既に「着氷さえ出来れば!」の段階まで言っている男子選手はいるそうなんです。
ちなみに、この作品を「5回転半なんて、ファンタジー!」だとして、見限ったフィギュア・スケート好きのマンガ・ファンも少なく無かった?ようですが、必ずしも不可能ではないようです。既に体操でも床運動で、4回転ヒネリ(体操で回転とは立て回転を指しますが、特に競技フィギュアでは立て回転は「危険」として」禁止されています)を成功させている日本人選手がいますが、体操の床よりも競技場が広く(30m×60m)、速度も出るスケート(瞬間的には時速にして40キロぐらいは、世界選手権クラスの人ならでるそうですが、フィギュア・スケートでは広さと滑り方の問題で、飽くまでも瞬間的に!だ、そうです)では、5回転はまず不可能ではないとされています。
ただ、フィギュア・スケートでは良く語られるように、「初めて1回転のトゥループジャンプが、成功したと認められるのが1920年。
その後、1964年に3回転が公認されるまで、2回転(ダブル)以上の回転は無理だ!不可能だ!!と、言われ続けていたそうです。それが24年後の1988年に初の4回転が公認された」常にフィギュア・スケートの歴史は、不可能への挑戦の歴史だと言われるのは、他のスポーツ競技と同じです。
1回転半アクセル・ジャンプを最初に成功させたのは、ノルウェーのアクセル・パルハウゼンさんで、1882年の事だそうです。そして、1948年にダブル・アクセル(2回転半)が初めて公認され、1978年にトリプル・アクセル(3回転半)が公認されました。
なんと2回転半から3回転半まで、何と丁度30年の月日が掛かっています。
1960年代ですら、「3回転半に挑戦するなんて無謀だ!出来るはずが無いッ!!怪我するだけだ」と言われていたそうです。実際フィギュア・スケートにおいて、《前向きに飛ぶ事》は、想像を絶するほど怖いのだそうです。
初めてこれを、1882年に初めて1回転半を飛んだアクセルさんは、実は本来スピード・スケートの選手で、成功させた時もスピード・スケートの靴を履いていたそうですから、前向きに飛ぶ事は当然だったのかも知れません。
しかしそれでも、練習中は「自殺ジャンプの練習をしているのか!?」と周囲の、当時のフィギュア・スケート(当時はスペシャルフィギュアとよばれていました)関係者からは、言われていたそうです。まさしくこの、前に向かって力任せに勢いで跳び上がり、回転するという素朴なジャンプは、結局フィギュア・スケートが現在の形に整って行くに連れ、「実は最も難しいジャンプだった!」事が明らかになります。
それはダブル・アクセルの公認が、1回転半から実に66年の月日が流れていた事からもわかります。間に2度の世界大戦を挟んだ事も大きな原因ですが、それ以外のジャンプもほとんど第1次世界大戦前には、出揃っています。
例えば、スウェーデンのウルリッヒ・サルコウさんが、1回転を初めて成功させたのは1909年とされ、第一次大戦前です。
そして2回転サルコウが公認されたのが、1926年で第二次大戦前の事です。1955年に、3回転サルコウが公認されました。そして1998年に、遂に4回転サルコウが成功し公認されました。
3回転から4回転まで、実に40年以上の歳月が掛かっています。もちろん、幾らジャンプの中でトゥループに次いで難易度が低いとされている、サルコウ・ジャンプでも当然のように当然1960~70年代には、「4回転などお伽話だ!夢物語だ!!」だと、言われていました。
しかし、その間にも何人ものフィギュア・スケーターが、挑戦と失敗を繰り返していた事は、間違い有りません。
こうなれば当然、4回転半アクセル・ジャンプいわゆる『クワドラブル・アクセル』も、不可能とは言えません。
ただ実際には、まだ着氷まで成功した例は無いようですが、練習などでは4回転半を廻るところまでは、既に可能だという事からこの『ブリザード・アクセル』という物語は、スタートしています。
そして主人公は、中学1年生で初めてフィギュア・スケートを知り、見よう見マネで3回転半を、アクセル・ジャンプで廻り切ります。見事に、着氷には失敗しますが‥‥‥。さらにこのトリプル・アクセルを、意地でも成功させようとした結果、これも着氷失敗ではありますが、無意識の内に4回転半を廻り切ります。
この驚くべき才能と、恵まれた体力や運動神経を間近にした、フィギュアのコーチによって初めて彼の目の前に、30m×60mのアイス・リンクという舞台が開けました。
ですが、4回転半はブリザードではあっても、実はタイトルの『ブリザード・アクセル』は、4回転半の事ではありません。
本当の意味での「ブリザード・アクセル」とは?と言う事で、この作品は終わります。ちなみにこの「ブリザード」とは、主人公のジャンプの余りの勢いと、回転の激しさに目を奪われた最初に目を付けたコーチが、思わず呟いたのですがその後は出て来ません。主人公の名前が、北里吹雪(きたざと・ふぶき)だと言う事も理由です。
彼の初めてのアメリカ遠征でTVの解説者が、思わず彼の名前の吹雪とは、英語のブリザードという意味だ!と、熱狂中継した事から広まったと言う事になります。そして、最後に彼がオリンピックの舞台に登場した時には、彼の異名もまた共にその技の名前として大きく描かれて終わります。
一応フィギュア・スケートでの、ジャンプの回転数の呼び名を、整理しておきます。
●1回転=シングル
●2回転=ダブル
●3回転=トリプル
●4回転=クワドラブル
当然アクセル・ジャンプはこれら全てに、半回転プラスされるので日本語では、2回転半とか3回転半と呼びます。
ですが、国際的には3回転半のアクセルも他のジャンプと同じく、トリプルと表現されています。ただし、難易度は現在の採点評価では、キッチリとプラス0.5ポイントだそうです。
更に現在では、基本的にシングル・アクセルは1回転半で、半回転のみの場合は無回転アクセルと判断され、採点評価は事実上付かないようです。
さて実に長い前置きでしたが、ここからはこの作品の中心。
何故かアクセルはおろかジャンプすら、中心にはありません。もっぱら、急造男女ペアがいかにして成長するかという、ペア・スケーティングを通して描かれる、少年少女(2人とも中学1年生です!)の恋愛ドラマが描かれます。

〈と言う訳で、ペアを組んだら最初のお約束です〉



〈いきなりの告白です!が、この2人は中学1年生です〉

〈「何回、私に告白させる気?」青春です!!〉

〈ペアの練習では、男女共が再起不能の
大怪我をする事は、珍しく無いそうです〉

〈互いを恋人以上に想いやり、夫婦以上に
信頼した激しい練習の結果が、これです〉

〈と言う訳で、バンクーバー冬季オリンピックで
ペアと男子シングルで2個の金メダルを!?〉
そして4年後(物語は設定上、2005年だそうです)の、すっかり大人びた感じに成長した2人の姿が、バンクーバー冬季オリンピック会場に、現れます。
事実上、物語はここで終わっています。後はエピローグ的に、結果のみを伝えます。あれほど苦労したペアは、その目標を軽々と達成した事だけを、知らせます。それだけではなく、2人が今後の人生に於いても、ペアを組み続ける事を示唆(しさ)するだけです。
そして、主人公のショート・プログラム直前でそのタイトル名の異名で大歓声を受けて、リンクに登場した場面で物語は終わります。
この時、「~もう一つの夢を叶えに」そう見送る彼女に囁くと、主人公は堂々とリンクに滑り出します。
男子シングルとペアの金メダル。これが中学1年の時にフィギュア・スケートを始め、同じ時に成り行きでペアを組む事になった、彼女に語った「夢」だったからです。
この物語の中で、主人公が困難や壁に出会うと、常に繰り返し口にするのは「諦める事はいつでも出来る」。
けれど「諦めない事は今しか出来ない」半分以上コジ付けみたいだとも、思いますが何とも少年マンガらしい言葉だとも思えます。
●トゥループ
●サルコウ
●ループ
●フィリップ
●ルッツ
●アクセル
以上6種類で、全て踏切の仕方の違いから名前が付いています。
このうち有名で最高難度でもある、アクセルですが、この飛び方だけが特殊でこれらのジャンプの内で唯一、前向きに飛ぶ飛び方です。原則的にフィギュア・スケートでは、バックの方がスピードが出て、踏み切りもし易いのだそうです。同時に着氷も、バックになりますので成功すれば、必ず1回転しています。
アクセル・ジャンプも同じで、加速は通常後ろ向きに(当初この作品の主人公は、前にしか滑れませんでした)しますが、飛ぶ前に(瞬間にブレーキを掛けるようにして、前を向きより高く加速して飛び出す技術を、主人公がマスターする様子が、作品には描かれています)前を向いて、後ろ向きに着氷します。
この為他のジャンプと異なり、アクセルだけは1回転半しなければ、回転した事になりません。そのせいで、前向きに降りると失敗ジャンプとなり、1回転は1回転+半回転の1回転半となります。ちなみに最初主人公は、体力と動体視力も含めた運動神経は抜群でしたが、前向きの滑り方しか知りませんでした。その為、素直に前向きから加速しそのまま踏み切り、3回転半のつもりで4回転半ジャンプを、着氷に失敗しながらも見よう見マネだけでやってしまいます。
4回転半を、公式の試合で成功した例は、2015年現在も存在しません。
しかし男子では既に、アクセル以外の5種のジャンプを全て4回転で成功させている、選手もいるそうです。そして4回転半(クワドラブル・アクセル)も練習等では、この作品が描かれた2005年当時で、既に「着氷さえ出来れば!」の段階まで言っている男子選手はいるそうなんです。
ちなみに、この作品を「5回転半なんて、ファンタジー!」だとして、見限ったフィギュア・スケート好きのマンガ・ファンも少なく無かった?ようですが、必ずしも不可能ではないようです。既に体操でも床運動で、4回転ヒネリ(体操で回転とは立て回転を指しますが、特に競技フィギュアでは立て回転は「危険」として」禁止されています)を成功させている日本人選手がいますが、体操の床よりも競技場が広く(30m×60m)、速度も出るスケート(瞬間的には時速にして40キロぐらいは、世界選手権クラスの人ならでるそうですが、フィギュア・スケートでは広さと滑り方の問題で、飽くまでも瞬間的に!だ、そうです)では、5回転はまず不可能ではないとされています。
ただ、フィギュア・スケートでは良く語られるように、「初めて1回転のトゥループジャンプが、成功したと認められるのが1920年。
その後、1964年に3回転が公認されるまで、2回転(ダブル)以上の回転は無理だ!不可能だ!!と、言われ続けていたそうです。それが24年後の1988年に初の4回転が公認された」常にフィギュア・スケートの歴史は、不可能への挑戦の歴史だと言われるのは、他のスポーツ競技と同じです。
1回転半アクセル・ジャンプを最初に成功させたのは、ノルウェーのアクセル・パルハウゼンさんで、1882年の事だそうです。そして、1948年にダブル・アクセル(2回転半)が初めて公認され、1978年にトリプル・アクセル(3回転半)が公認されました。
なんと2回転半から3回転半まで、何と丁度30年の月日が掛かっています。
1960年代ですら、「3回転半に挑戦するなんて無謀だ!出来るはずが無いッ!!怪我するだけだ」と言われていたそうです。実際フィギュア・スケートにおいて、《前向きに飛ぶ事》は、想像を絶するほど怖いのだそうです。
初めてこれを、1882年に初めて1回転半を飛んだアクセルさんは、実は本来スピード・スケートの選手で、成功させた時もスピード・スケートの靴を履いていたそうですから、前向きに飛ぶ事は当然だったのかも知れません。
しかしそれでも、練習中は「自殺ジャンプの練習をしているのか!?」と周囲の、当時のフィギュア・スケート(当時はスペシャルフィギュアとよばれていました)関係者からは、言われていたそうです。まさしくこの、前に向かって力任せに勢いで跳び上がり、回転するという素朴なジャンプは、結局フィギュア・スケートが現在の形に整って行くに連れ、「実は最も難しいジャンプだった!」事が明らかになります。
それはダブル・アクセルの公認が、1回転半から実に66年の月日が流れていた事からもわかります。間に2度の世界大戦を挟んだ事も大きな原因ですが、それ以外のジャンプもほとんど第1次世界大戦前には、出揃っています。
例えば、スウェーデンのウルリッヒ・サルコウさんが、1回転を初めて成功させたのは1909年とされ、第一次大戦前です。
そして2回転サルコウが公認されたのが、1926年で第二次大戦前の事です。1955年に、3回転サルコウが公認されました。そして1998年に、遂に4回転サルコウが成功し公認されました。
3回転から4回転まで、実に40年以上の歳月が掛かっています。もちろん、幾らジャンプの中でトゥループに次いで難易度が低いとされている、サルコウ・ジャンプでも当然のように当然1960~70年代には、「4回転などお伽話だ!夢物語だ!!」だと、言われていました。
しかし、その間にも何人ものフィギュア・スケーターが、挑戦と失敗を繰り返していた事は、間違い有りません。
こうなれば当然、4回転半アクセル・ジャンプいわゆる『クワドラブル・アクセル』も、不可能とは言えません。
ただ実際には、まだ着氷まで成功した例は無いようですが、練習などでは4回転半を廻るところまでは、既に可能だという事からこの『ブリザード・アクセル』という物語は、スタートしています。
そして主人公は、中学1年生で初めてフィギュア・スケートを知り、見よう見マネで3回転半を、アクセル・ジャンプで廻り切ります。見事に、着氷には失敗しますが‥‥‥。さらにこのトリプル・アクセルを、意地でも成功させようとした結果、これも着氷失敗ではありますが、無意識の内に4回転半を廻り切ります。
この驚くべき才能と、恵まれた体力や運動神経を間近にした、フィギュアのコーチによって初めて彼の目の前に、30m×60mのアイス・リンクという舞台が開けました。
ですが、4回転半はブリザードではあっても、実はタイトルの『ブリザード・アクセル』は、4回転半の事ではありません。
本当の意味での「ブリザード・アクセル」とは?と言う事で、この作品は終わります。ちなみにこの「ブリザード」とは、主人公のジャンプの余りの勢いと、回転の激しさに目を奪われた最初に目を付けたコーチが、思わず呟いたのですがその後は出て来ません。主人公の名前が、北里吹雪(きたざと・ふぶき)だと言う事も理由です。
彼の初めてのアメリカ遠征でTVの解説者が、思わず彼の名前の吹雪とは、英語のブリザードという意味だ!と、熱狂中継した事から広まったと言う事になります。そして、最後に彼がオリンピックの舞台に登場した時には、彼の異名もまた共にその技の名前として大きく描かれて終わります。
一応フィギュア・スケートでの、ジャンプの回転数の呼び名を、整理しておきます。
●1回転=シングル
●2回転=ダブル
●3回転=トリプル
●4回転=クワドラブル
当然アクセル・ジャンプはこれら全てに、半回転プラスされるので日本語では、2回転半とか3回転半と呼びます。
ですが、国際的には3回転半のアクセルも他のジャンプと同じく、トリプルと表現されています。ただし、難易度は現在の採点評価では、キッチリとプラス0.5ポイントだそうです。
更に現在では、基本的にシングル・アクセルは1回転半で、半回転のみの場合は無回転アクセルと判断され、採点評価は事実上付かないようです。
さて実に長い前置きでしたが、ここからはこの作品の中心。
何故かアクセルはおろかジャンプすら、中心にはありません。もっぱら、急造男女ペアがいかにして成長するかという、ペア・スケーティングを通して描かれる、少年少女(2人とも中学1年生です!)の恋愛ドラマが描かれます。


〈と言う訳で、ペアを組んだら最初のお約束です〉






〈いきなりの告白です!が、この2人は中学1年生です〉


〈「何回、私に告白させる気?」青春です!!〉



〈ペアの練習では、男女共が再起不能の
大怪我をする事は、珍しく無いそうです〉


〈互いを恋人以上に想いやり、夫婦以上に
信頼した激しい練習の結果が、これです〉


〈と言う訳で、バンクーバー冬季オリンピックで
ペアと男子シングルで2個の金メダルを!?〉
そして4年後(物語は設定上、2005年だそうです)の、すっかり大人びた感じに成長した2人の姿が、バンクーバー冬季オリンピック会場に、現れます。
事実上、物語はここで終わっています。後はエピローグ的に、結果のみを伝えます。あれほど苦労したペアは、その目標を軽々と達成した事だけを、知らせます。それだけではなく、2人が今後の人生に於いても、ペアを組み続ける事を示唆(しさ)するだけです。
そして、主人公のショート・プログラム直前でそのタイトル名の異名で大歓声を受けて、リンクに登場した場面で物語は終わります。
この時、「~もう一つの夢を叶えに」そう見送る彼女に囁くと、主人公は堂々とリンクに滑り出します。
男子シングルとペアの金メダル。これが中学1年の時にフィギュア・スケートを始め、同じ時に成り行きでペアを組む事になった、彼女に語った「夢」だったからです。
この物語の中で、主人公が困難や壁に出会うと、常に繰り返し口にするのは「諦める事はいつでも出来る」。
けれど「諦めない事は今しか出来ない」半分以上コジ付けみたいだとも、思いますが何とも少年マンガらしい言葉だとも思えます。
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