『終末のイゼッタ』第2話から始まったオープニングに出てくる、イゼッタが乗る様に作られた巨大機銃(ライフル)?は、何がモデルでしょうか?
オリジナルTVアニメ・シリーズ『終末のイゼッタ』の第2話から始まった、オープニングの映像の中で主人公ヒロイン・イゼッタが持ち、乗って飛ぶ?巨大機銃(ライフル?)は、第2話の作中で描かれた旧ソ連製の対戦車ライフル「シモノフPTRS-1941」とは明らかに違います。
では、何がモデルなのか?と考えると、実は思い当たりません。まず主人公のの体格から考えると、かなり大きいものだと思われますが、実際にこんな大きな機銃は携帯銃器としては無理があります。元々、シモノフPTRSですら一人で運ぶには、大き過ぎて重過ぎると言われていますから・・・。
《「終末のイゼッタ」オープニング》
でまァ、これに似ている大型ライフルというとこれぐらいしか、思い付かないんですよねェ~。
特徴は銃の上から被せる様な、大型の弾倉(マガジン)です。何しろ規格外の旧ソ連製14.5×114ミリ機銃弾よりもさらに大きい、20ミリ×138の機銃弾が採用されていますが、ちょっと特殊な構造もあってこの後普及はしなかったようです。
『MEDIAGUN・DATABASE』様・リンク済みより
〈ラティ m/39 ・ Lahti m/39 【対戦車自動小銃】 〉
引用註:ここでは「自動小銃」となっていますが、他にも「対戦車ライフル」から「対戦車銃」など、様々な種別名で呼ばれています。
現在では口径が20ミリを超えると、銃弾ではなく砲弾と呼ばれるのですが、さすがに「対戦車砲」とでまは呼べないようで、あくまで銃器のジャンルです。
また前方に倒された2脚ポッドの代わりに、先が反り返った板を付けた脚は見た目通りの橇(そり)で、雪の多いフィンランドで重い銃器を、冬場に移動させる為だそうです。
銃口から吊り下がっているのは、これも冬季移動用の「マズル・カバー(銃口覆い)」だそうです。雪が詰まったぐらいではともかく、解けた雪が凍って氷になれば確かに危険でしょうから・・・。
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全長・・・・・2,240ミリ(2メートル24センチ)
重量・・・・・49.5kg
口径・・・・・20ミリ×138
装弾数・・・10発
発射形式・セミオート式
製造国・・・フィンランド
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「ノルスピッシィ(Elephant gun:象撃ち銃)」の愛称を持つ、フィンランド製セミオート式対戦車ライフル。
日本では、ラティのほかラハティとも呼ばれる。アイモ・ラティ技師が開発した本銃は、第2次世界大戦勃発直後の1939年に開発。同年末に発生した冬戦争では試作型の2挺が実戦投入され、ソビエトの戦闘車両相手に威力を発揮した。
続く継続戦争でも約1,800挺のm/39が投入され、その頃のT34やKV戦車に代表される急進化した戦車相手には力不足の感があったが、それでも極度に不足する戦車や対戦車砲の代用として重宝され、敵攻撃機に対する対空銃としても使われるなど継続戦争終結まで第一線で使われ続けた。
大戦後、生き残ったm/39は1960年代にアメリカの銃器コレクター向けとして約1,000挺が輸出され、残りは対ヘリコプター火器として配備され続けたが、1988年に最後のm/39が配備解除され、その役目を終えた。
引用者註:《MEDIAGUN・DATABASE》様によると、オープニングで使っているのは以下の『RSAF ボーイズ対戦車ライフル(リンク済み)』だ、そうです。
「イギリスのボーイズ大尉が原設計を行い、RSAFで製造されたボルトアクション式対戦車ライフル。「ボーイズ対戦車ライフル」の名で知られるが、正しくは1937年に《ライフル、対戦車用、0.55インチ、ボーイズ(リンク済み)》の制式名でイギリス軍に採用されている。採用直前に亡くなったボーイズ氏に敬意を表して、その名があてられたものだ。
初期型のMkⅠと、初速を増して貫通力を高めた後期型のMkⅡが存在したが、装甲が強化されたドイツ戦車には威力不足で、1943年にPIATと取って代わる形で運用を終えた。しかし、装甲の薄い日本戦車には有効で、太平洋戦線では大戦後期まで対戦車兵器として運用されていた。」
そうで、さらに「終末のイゼッタ(リンク済み)」について、「細部の形状が若干異なる。両側に折り畳み式のハンドル装着。跨る用のサドル装着。キャリングハンドル装着。フットレスト装着。バイポッドは廃止。魔力を付与し、〈魔女の箒〉として使用するOPで使用」と記されています。
という訳で当然この〈ラティ m/39 ・ Lahti m/39〉に使われている、正式には20ミリ×138Bという機銃弾が問題となります。
20×138B弾とは第二次世界大戦で、対戦車ライフルと対空機関砲で使用された20ミリ口径弾である。
《概要》
1930年ごろにスイスのゾロトゥルン社において、開発された弾薬である。
スイスでは対戦車ライフルで採用されたほか、ドイツでは陸軍の機関砲にも採用された。薬莢の後端が帯状になっている、ベルテッドケース弾と呼ばれる構造をしている。
〈以下略〉
ベルテッドケース(ベルテッド薬莢)とは、強力なライフル用カートリッジの薬莢の底で、リムの手前(写真下部の薬莢底のリムと薬莢の間の溝)を分厚くして、帯(ベルト)を巻いた様(相撲の廻しの様)にして補強したタイプの薬莢です。
アメリカではマグナムカートリッジとも呼ばれて、強力なライフルカートリッジの代名詞にもなっているそうです。ただ現在では、ケース自体の強度が増した上に、この状態だと単発式のボルトアクションならばともかく、自動式の機銃弾としては「リムレス」の意味が無くなり。フルオート(全自動)射撃の場合不都合なので、廃れてしまったタイプだそうです。
20ミリ×138B弾の「B」とは、このベルト付きである事を意味しています。
〈参照:フリー百科事典・ウイキペディア(Wikipedia・リンク済み)〉
「終末のイゼッタ」という作品が、舞台にしているのは史実上では第2世界大戦で、主人公及び彼女を「ただ一人の友人(とも)」と呼ぶお姫様の国が、史実による当時のスイス連邦とリヒテンシュタイン王国(劇場版アニメ「ルパン3世・カリオストロの城」の舞台・カリオストロ公国のモデル)をイメージさせます。
とすると、実際に1930年ごろにスイスで開発されたという20ミリ×138Bという、非常識な大きさと威力の機銃弾とまさに1939年ナチス・ドイツのポーランド侵攻に始まる、第2次世界大戦。
この時、ドイツとまさかの不可侵条約を結んだ旧ソ連は圧倒的な戦力をもって、隣国フィンランドに雪崩れ込もうとしました。有名な「冬戦争」ですが史実にある通り、フィンランドは徹底した遅延(撤退)持久戦で迎え撃ちました。
当初旧ソ連軍は、23個師団45万人の将兵、火砲1,880門、戦車2,385輌、航空機670機を擁する大軍団でした。
しかし、冬季にはマイナス40度にもなる気候と、雪が降り積もった森林と丘陵の入り組んだ地形を全く考慮せずに、大軍を侵攻させました。しかも、最低でも2~3ヵ月分の補給物資を用意するという意見は、少数意見として無視され1~2週間分の補給物資で充分とされたようです。この結果ある説によれば旧ソ連軍の戦死者は、その80%が補給を絶たれた上の凍死だとすら、言われています。
逆にフィンランド軍は慣れ親しんだ地形と気候を利用し、予め持久的ゲリラ戦を想定していました。
歪狭な地形の雪の降り積もる森林地帯に、旧ソ連軍は大兵力を押し込むという愚を犯し続け、幾筋にも分かれた長く伸びた行軍は、フィンランド軍の待ち伏せの格好の的となり。やがては、行軍する先頭と後尾を同時に叩いて、寡兵による包囲殲滅戦に持ち込むという、独特の戦術として確立しました。
結果としてこの冬戦争は、フィンランドが講和に応じる形で事実上敗北しました。
その為、旧ソ連の強欲な要求を飲まざるを得ませんでした。しかし最終的に歩兵100万人以上を動員して、最終動員が歩兵25万人と言われるフィンランドに対し、旧ソ連側の戦死者は公式には約12万7千人で、実際には20万人以上とも言われ(後にスターリン批判を行ったフルシチョフは100万人以上としています)ています。これに対してフィンランドは、約2万7千人を失ったとされています。
もともと旧ソ連に対して、圧倒的に人口も軍備も少なかったフィンランドにとっては、決して少なくない損失でまた旧ソ連の強欲な講和条件は、辛うじてフィンランドの独立を認める言うに等しいものだったそうです。
このためフィンランド国民の中には、強烈な反旧ソ連感情が残ったそうです。この結果が、1年と少しの休戦期間を経て1941年に始まる所謂(いわゆる)「継続戦争」です。
国境線を境に、大軍を寡兵で迎え撃つという状況は、「終末のイゼッタ」の設定状況と似ています。ですのでここで、フィンランドの対戦車ライフルが登場しても、不自然では無いでしょう。機銃弾は元々スイス製ですし、史実ではスイスはドイツの侵攻を、受けていませんから。この作品での対帝国戦のモデルが「冬戦争」でも、おかしくは無いと思います。
となると、このオープニングのイゼッタが使う銃のモデルは、やっぱりラティ m/39何ですかねェ~!?
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《「終末のイゼッタ」オープニング・フルコーラス》
映像は単純な繰り返しだそうです。



〈このバカデカさが問題です。《ラティ m/39》だとしても、全長は
2メートル24センチです。シルエットは確かに橇(そり)の部分を
除けば、上から被せる曲線の弾倉など、よく似ていますが・・・〉
〈マズル(銃口)カバーを付けたラティ m/39 ・ Lahti m/39の左側面〉

〈もちろんこんなハンドルはありませんが、2脚ポッドが橇を使用して
いる時は前に倒してあるので、その代わりと言えなくもありません…〉


〈ここから空中に飛び出した後、反転して1発撃っています。
以降はその時のものか、その次にもう1発撃ったのか?〉








〈良くわかりませんが、排出された薬莢殻には底の方に厚味
を増す為の帯状のものが、見えると思えば見える気もします〉


〈この色っぽい?シーンの意図は、良くわか
りません。変身シーンでも無いでしょうに?〉



〈右足で、開いた排莢口を閉じるような動作が見えます。確かに
《ラティ m/39》には、1発撃つ毎に排莢口が機関冷却の為に、
開きっぱなしになるという特徴があります。それを手動で戻す
時に、次弾が装填されるという独特の機構です〉


〈仮に元が《ラティ m/39》だったとしても、かなり主人公用にアレンジ
されたオンリーワンの、作品用の特別仕様である事は間違いありません〉
以下に現存する、本物のラティ m/39を使った実写映像があります。
独特の弾倉着脱シーンや、引き金の後ろにあるレバーを回転させて、初弾の装填準備をする作業など、他の半自動機銃には無い特徴的な機構が良くわかります。なお当然ですが、発射後の空薬莢は下へとに排出されます。これも、他に類の無い機構です。
《「ラティ m/39 ・ Lahti m/39」の実写映像》
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